開高健さんを読んだ感想記事 文章で料理の味、香りを伝えてくれる作家だナ

書評

料理を作り食べた感想や、酒を飲んだ感想をブログに書いています。

料理の味や酒の香りを、読んでいる人に、文章で伝えるのはむずかしいです。また味と香りを伝える言葉・語彙を知らなさすぎると悩んでいました。

そこで料理の味や酒の香りの文章での表現を増やそうと、食と酒に関係する本とエッセイを読みあさりました。

読んだ作家さんのなかで開高健さん流に書くなら、一番ミートした作家さんが開高健さんでした。開高健さんの味を伝える言葉・語彙の豊富さ、文章で伝える味の表現力、開高健さんの思考、哲学、すべてがミートしました。

開高健さんの書いた本と、開高健さんが褒めていた作家さん、開高健さんが読んだであろう作家さんの読書感想文的な記事になっています。

開高健|読書感想文

  • 私の釣魚大全
  • 最後の晩餐
  • 知的な痴的な教育講座
  • ロマネ・コンティ・一九三五年 六つの短篇小説
  • 風に訊け
  • 小説家のメニュー
  • 新しい天体
  • 開高 健 電子全集1 漂えど沈まず―闇三部作
  • やってみなはれ みとくんなはれ
  • 地球はグラスのふちを回る

私の釣魚大全

最初に読んだ開高健さんの本は『私の釣魚大全』だった。手にとった理由はAmazonで半額だったとか、レビューの評判がよかった、などテキトウな理由だったと思います。

『私の釣魚大全』は世界中、日本中の魚を、開高健さんが釣りまわっている本です。読んだ当初は、まったくピンとこず、戦艦大和の沈没場所がわからないって、古い本なんだな。とか、ドイツの河原で飲む白ワインが、キリっとしておいしそうに書かれているナ。と、ふつうの感想を書いていました。

思い返せば、白ワインがおいしそとうと書いているのは、すでに開高マジックにかかっていたのかもしれません。

最後の晩餐

文章で料理や酒の味を伝えるのに、いつも悩まされ、とても困っている。エッセイの名手向田邦子さんが、料理のおいしさを伝えるなら開高健さんと書いていたので、料理エッセイ『最後の晩餐』を読んでみました。

サントリーにつとめていたこと、ベトナム戦争中に従軍記者をしていたこと、またベトナムで死にかけたことを知りました。

エッセイは東西問わず、豊富な食の知識がふんだんに書かれており、食に関する知識を吸収することができます。また開高健さんは、交流関係が幅広く邱永漢さん、調理師学校校長のさん、吉村作治さんなど多数の人物が登場するのも魅力です。

食べた料理の味の表現方法がコッテリと詳細に書かれており、ここまで料理の味を、文章で表現できるのかとビックリさせられました。「おいしい、とろける、言葉にならない」なんて言葉は、一切使わない。料理の味を文章で表現してやろうという、真剣勝負のような気概を感じるでしょう。

『最後の晩餐』を読み終わった瞬間、開高健さんのファンになっていました。

知的な痴的な教育講座

『最後の晩餐』とうってかわって、エロい話が80%、知的な話が20%で構成されているエッセイ『知的な痴的な教育講座

潮吹きは、オシッコかどうか。「おまえらの嫁をおかしてやるゾ」と言われたモンゴル兵は、どんな仕返しをしたのか。シャンゼリゼ通りのマクドナルドの話。などなど、ユーモアにあふれウェットに飛んだ話を楽しめます。

小説やエッセイを読んで思うことがあるんだ。一人の小説家の脳ミソのなかに、どれだけの知識が詰め込まれているのだろうか。私の脳みそはスッカスッカ、開高健さんの脳みそは、コッテリ濃厚だったんだろうなと考えました。

ロマネ・コンティ・一九三五年 六つの短篇小説

長編小説をイキナリ読みはじめるのをためらい、買ったのが短篇小説集。『ロマネ・コンティ・1935

短篇小説だが読み切ると、ドッと疲れたぁ。しつこいまでに綿密なワインの表現、ちょっとラインが崩れている妖艶な白人女性の体、ぷ~んと嫌な臭いがしてきそうな路上などの様子が、ネチっこく丁寧に書かれています。

エッセイとは違った筆の力が、小説には練りこまれていました。

ロマネ・コンティ・1935』を読み、せや、ソムリエの表現方法を学べばいいんじゃない、と考えて読んだ本が『言葉にして伝える技術

言葉にして伝えるのはむずかしいナ。

風に訊け|風に訊け ザ・ラスト

読者のQ&Aに、開高健さんが答えるというスタイルの本。

1行だったり、長文で答えたりり、質問をヒラリとかわして予想外の解答をしたりする。多くの解答から、開高健さんのポリシーや哲学を知れます。

また開高健さんの好きな作者や酒、音楽を知ることができ、物事の考え方や、哲学的なものを知ることができました。

安くてうまいものを見つけることこそ、あるいはそういうものをつくることこそ、文化の力なんだ、と。

引用元:風に訊け

まさにその通りでございます。と何度もうなずいた。1日に1~2P『風に訊け』を読むのが日課となっています。

本には開高健さんの写真も掲載されており、なんだろう、このモッサリしたおっさんと思っていましたが、本を読みすすめるうちに、不思議と「ヤダめちゃ恰好いい」となってくるんです。

小説家のメニュー

目次がとても特徴的な食事エッセイ『小説家のメニュー

『小説家のメニュー』の特徴として、行間があいていることと、料理の表現方法がシンプルになっていること。

開高健さんの小説やエッセイは行間があいておらず、紙全体にミッチり書かれているのだが、『小説家のメニュー』は行間が1行ほどあいています。

ねっとり濃厚な料理の表現が特徴だった開高健さんが『小説家のメニュー』では、文字を少なくし、正確に味を表現しようと、文字と格闘しているように見えました。

開高健さんの、食にかんするエッセイの入門書として、ピッタリだと思います。

新しい天体

開高健さんの『新しい天体』長編小説にいよいよ挑戦。読み切れるかな、大丈夫かな、読み切ることできるかな。と、ドキドキして読みはじめたら、『新しい天体』半日ほどで読み終えました。

料理の味を舌と鼻、目、耳で味わえる文章、食べている店や見ている風景を、目に見えるように書いてある綿密な文章に引きこまれます。料理をガツガツとむさぼるように、ページをめくっていると、アッというまに読み終わるでしょう。

ストーリ自体は平凡というか、まったく面白くないです。言葉の味と風景の表現だけで、力づくで最後まで読まされていました。手元に置き、料理や酒の表現に困ったとき、チラッと読んでみて、パク、いやオマージュして、文章に使ったりしています。鋭い読者には、パクったのを見破られたりもしました。

開高 健 電子全集1 漂えど沈まず―闇三部作

『輝ける闇』『夏の闇』『花終わる闇』(未完)

開高健さんの小説のうち、最高傑作にあげられる『輝ける闇』『夏の闇』

闇三部作の集大成になる予定だった『花終わる闇』は開高健さんの死去により、未完となっています。

輝ける闇』はベトナムの従軍記者をした経験を元に書いた小説。戦争時のベトナムが小説の舞台。ベトナム戦争の記憶など、ほとんどない私が、開高健さんの目を通して、ベトナム戦争時の日常を体験することができました。

夏の闇』は『輝ける闇』の、何年か後の設定だと思う。きっちりと書かれてはいない。『輝ける闇』の小説の舞台も、きっちりとは書かれてはいないが、フランスとドイツと推測される。

ひたすら、寝て、食べて、情交するだけの小説。そんな小説は面白くないと、ポイっと投げ捨てられるだろうが、開高健さんにかかると、寝て、食べて、情交するだけの小説なのに、ページをめくる手がとまらない。

文章を読んでいると、小説を疑似体験している気分になってくる。小説に書かれている食べた気になり、寝心地のよさそうなソファや安ベッドで寝たような気になり、ヨーロッパのお酒を飲んだ気になっているうちに小説を読み終えていた。

『夏の闇』は電子書籍を買ったのに、紙の本も買うほど気にいった。紙の本のあとがきがC・W・ニコルさんだった、はじめて読んだエッセイがC・W・ニコルさんだったのを思い出し、懐かしい気持ちになり、調べてみると2020年に亡くなられていた。C・W・ニコルさんは、英語版の『夏の闇』を大絶賛。英語に訳しても『夏の闇』は、すばらしいのダ。

未完の『花終わる闇』は感想を書かないでおこうと思う。開高健さんが書き直し、まったく違う小説に生まれ変わり、『花終わる闇』が発売された可能性もあったと思うので。

一言だけ「完成した『花終わる闇』を読みたかった」

やってみなはれ みとくんなはれ

やってみなはれ みとくんなはれ』はサントリーの歴史を書いている小説。

戦前のサントリーの歴史を山口瞳さんが書き、戦後のサントリーの歴史を開高健さんが書いています。二人ともサントリーの宣伝部出身の作家さん。

冒険心あふれる熱い男たちが。成功と挫折を繰り返しながら、国産ウィスキー製造、ビール市場に参入と、未知の領域にドンドンと前進していく様子が書かれている。

「やってみなはれ」は本当にいい言葉だと思う。

山口瞳

山口瞳さんは、向田邦子さんもオススメしていた作家さんだ。『酒呑みの自己弁護』という本を読みました。

すべてのエッセイが、酒に関係することばかりという、驚くべきエッセイ。読んでいると、お酒を飲みたくなり、一つのエッセイは短くスラスラと読めます。

酒飲み”あるある”と、フフッと笑い頷きながら、いつのまにか酒を飲みすぎて、自己弁護することにならないようにご注意。

地球はグラスのふちを回る

酒と料理、釣り、旅行について書いているエッセイです。

酒、料理、釣り、旅行のどれかに興味がある人が『地球はグラスのふちを回る』を読み終わると。

世界中にある酒を飲みたくなり。文章を読み、ゴクンとツバを飲み込んだ、本に書かれている料理を食べてみたくなり。また、釣り竿をかついで川や海、渓流にでかけたくなり。北欧からヨーロッパ、東南アジア、アメリカを北から南に横断し、アマゾンへと辿りつく大旅行を家にいながら楽しむことができるでしょう。

いやいや、旅行に行きたくなるかもしれませんナ。世界を食べ、飲み、釣りあげ、駆けまわった作家を楽しめるエッセイ。

開高健を血肉にする

開高健さんの書いた本、すべてをまだ読み終わっていません。紹介した本だけ読み終わりました。

開高閉口』『地球はグラスのふちを回る』『オーパーシリーズ』『流亡記』『珠玉』と、読みすすめ、開高健さんの作品は、すべてを読もうと思っています。

好きな作家さんができたら、作家が影響を受けた作家を読め」という格言があり、開高健さんが『風に訊け』で、面白いといった作家・作品のメモをとり、作品を読むことをはじめました。

井伏鱒二

開高健さんは、戦前の小説家では井伏鱒二さん、中島敦さん、梶井基次郎さんの三人をあげていた。作家さんが好きな作家【御三家】と勝手に命名している。

井伏鱒二さんは教科書で読んだ『山椒魚』『黒い雨』しか読んだことがありませんでした。

随筆と短篇小説を集めた『川釣り

井伏鱒二さんの文章は、句読点の位置が、絶妙な場所に配置されおり、非常に読みやすい文章なのかなと考えました。古臭くなく、現代でも読みやすい作家さんだなと思います。

エッセイの中でさらっと、太宰治さんが登場し、一緒に濁流に流されそうになっているのは、ちょっとクスッとさせられました。

井伏鱒二さんは、太宰治と親交のあった檀一雄さんとも知り合いであり、開高健さんの釣りの師とも言われています。

中島敦梶井基次郎

中島敦さんは『李陵』『山月記』を読んだことはあったが、開高健さんがおもしろいと言った作品は『文字禍』と『悟浄出世』の2作品。

梶井基次郎さんも『檸檬』は読んだが、他の作品はまったく読んでいません。Amazonで中島敦さんと梶井基次郎さんの全集は勢いで買いましたが、読み終わることができるのか心配になってきました。

『檸檬』をパク、いやオマージュした短編小説を書いたりもしています。

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旧約聖書

開高健さんが『風に訊け』で、無人島に持っていくなら『旧語訳 旧約聖書』と書いていたので勢いで買いました。勢いで買いすぎたと反省。

読めども読めども、ページなくならず。登場人物が多すぎて覚えれない。朝起きて1~2ページ読むのが精一杯。無人島にこの一冊と流れつきたくないヨ。

エッセンシャル思考には、朝に読書をし、名著を読むとよいと書かれていたので、毎朝チョボチョボと聖書を読んでいます。

上の写真は、開高健さんが好きといった作家・作品にまじり、好きであったであろう作品・読んだことがあるであろう作品がまじっています。

“あろう”作品とはどういうことなんだい。それは次に紹介する本の2冊から、開高健さんが読んだと書かれていた作家さんと作品たちです。

開高健は何をどう読み血肉としたか

『オーパー』シリーズに、同行した編集者が書いた本『開高健は何をどう読み血肉としたか

目次の題名としてパクっています。

開高健さんからの口からではなく、第三者から見た開高健さんを知ることができる本。開高健さんの自宅には、1万冊近くの本があったそうです。本を読んでいるだろうとは思っていたけど、想像以上でした。

文章を真似るまえに、形から入る男。

開高健さんは、ブックカバーを外し捨ててから本を読みだすと書かれていたので、ブックカバーを外し読んでみた。たしかにブックカバーがないほうが、手に本がミートする。ブックカバーは捨てずに保管している。セコいねん、カンベンや。

男たるもの、ジョークの一つも言えないとダメと言われたと書かれていると、ジョーク本を読んで、ジョークを覚えようとした。

ジンをストレートで飲んでいたときけば、ストレートでジンを飲んでみたり。

開高健さんも、ハンモックを愛用していたそうだ。自宅で20年以上ハンモックを愛用している。

開高健さんを第三者から見た印象を知ることができる本。開高健さんの周りには笑いが溢れていたんだろうなと想像できました。ますます開高健さんが好きになった1冊だった。本の価格はちょっとお高いです。

開高健の名言

開高健の名言』親友だった谷沢永一さんが、開高健さんの名言を集め、注釈を書いている本。

なるほど、開高健さんはそう考えていたのかと、納得する部分もあるが、作者の気持ちが前面にですぎている注釈もおおいです。

よっぽどの開高健ファン以外には、オススメできません。

その中で開高健さんが、暗唱できるほど読んだという本が紹介されていました。

金子光晴

マレー蘭印紀行』金子光春が、1930年ごろに東南アジアを旅行した記憶を書いた紀行文学。

文章はやや古く漢字や単語がわからない箇所がたくさんあります。

読んでいると、な~んとなく開高健さんが影響を受けたであろう文章がみつけることができる。東南アジアの湿った空気、濃厚なジャングルの様子、ネットリ肌にまとわりつく汗などの表現が似ているような気がしました。

開高健さんのファンでなくとも、日本紀行文学の最高峰だと思う。風景を愉しみだけでなく、人間の悲しみ、残酷さを包括している。一読の価値はあります。

作中にミーゴレンがでてきた。昔からある料理だったんだとビックリしました。

開高健を読んで感想【まとめ】

開高健さんの小説・エッセイを読んで、文章で味や香りを伝えることができるとわかりました。

現在、開高健さんの書かれた本を、すべて読んだわけではありません。

記事を読んでくれる読者さんに、料理の味やお酒の香りを、きっちりと伝えられるように文章を書こうとなりました。

開高健さんの文章表現には、まだまだまったく1mmも及んでいませんが、文章で味や香りを伝えるように書き続けようと思います。

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