料理を作る楽しさを教えてくれた文豪『檀一雄』影がうすいなんてもう言わせない。

書評

料理人で旅人(老ヒッピー)、そして小説家だった檀一雄さんの著書を読んだ感想を書いています。

最初に読んだ著書は『檀流クッキング』でした。『わが百味真髄』『美味放浪記』をよみ、最後に『火宅の人』を読みました。

檀一雄は、無頼派とよばれています。おなじ無頼派であった太宰治や坂口安吾と交流があり、お二人と仲がよかったようです。

『檀流クッキング』を読み、料理をはじめました。読んでいなければ料理をしていなかったかもしれません。料理はあるもので作ればいいんだよ。分量もだいたいでいいよ。と、料理の作り方を教えてくれました。そして出来上がった料理はおいしいのです。

檀一雄の著書だけでなく、檀一雄に関係する本。『檀』『父の縁側、私の書斎』『檀流クッキング入門日記』の三冊を読んだ感想も書きました。お嫁さん、子ども、檀さんの長男のお嫁さんから見た檀一雄の姿が浮かびあがります。

檀流クッキング

自宅で作ることができる料理のレシピが、『檀流クッキング』にはたくさん書かれています。紹介されている料理は、日本料理から中国料理、西洋料理とジャンルを選びません。

『檀流クッキング』の目次をみて、興味のある料理から見ていくのをオススメします。読んでみると、「かんたんに作れそう」「おいしそうだな」となった料理から自宅で作り、あなたの料理帳にレシピに加えていくといいでしょう。

『檀流クッキング』で紹介されいるレシピは、化学調味量を使っていないレシピがおおいです。化学調味量が苦手な人には、もってこいの檀流クッキング。スローフードを先取りしていますね。

『檀流クッキング』は料理をイザ作りだそうとすると、材料の分量や調味料の分量が大雑把にしか書かれていないのですよ。しかも、10人前ぐらいできそうな量で檀一雄さんは料理を作ります。

分量を減らし、調味料の量をきめ、『檀流クッキング』を指針に、手探り&エラーをして料理を作りあげるしかありません。じぶんで挑戦し、じぶんのレシピにしていく過程が、楽しいのです。

完本・檀流クッキング

材料の分量や調味料の分量をきちんと知ってから、料理に挑戦したい人もおおいでしょう。

檀一雄の長男・檀太郎さんとお嫁さんの晴子さんが書いた『完本・檀流クッキング』には、レシピの材料の分量と調味料の分量がキチンと書かれています。分量を知りたい人も安心して料理を始められるでしょう。

『完本・檀流クッキング』には、『檀流クッキング』にのっていないレシピも紹介されています。

・アイリッシュ・シュチュー・タタキゴボウ・餃子・タルタルステーキ・乾しナマコとタケノコいため・水貝・ヤキメシ・アラブの肉団子・エビとソラ豆いため・地豆豆腐、ゴマ豆腐・ピロシキ・ラーメン・身欠きニシンとネマガリタケの煮ふくめ・葉くるみ・タカ菜のサラサラがゆ・煎り煮干し、ラッキョウのみそいため、韓国カヤクメシ・イカの筒煮とポンポン炊き・韓国風ゴマ油薄焼き・鶏のタゴス・シジミの醤油漬け・ビーフン・チャプツエ・博多の水炊き・秋サバのゴマ醤油びたし・イワシの煮付け・アジやイワシのヌカミソ炊き

引用元:完本・檀流クッキング

『檀流クッキング』にのっていないレシピをすべてあげようとしたが、疲れました。半分ほど書きました『完本・檀流クッキング』には70レシピほど追記されています。

分量も書かれている『完本・檀流クッキング』のほうが、料理をはじめやすいと言えるでしょう。

 わが百味真髄

『わが百味真髄』は日本の四季にわけ、料理にまつわる思い出やレシピを書いている食エッセイです。

想像だけでは書くことができない文章だなと思いました。その土地に生き、空気を吸い、料理を食べ、酒をおおいにかっくらう。楽しそうな旅行に憧れるが、お金もヒマもない人間は、『わが百味真髄』を読み、想像し、旅行地の空気や食べ物の味を想像するしかありません。自宅で世界中を旅行でき、料理を頭の中で味わうことができます。

『わが百味真髄』はおいしそうな料理を作るヒントがごろごろしているのも魅力でしょう。『檀流クッキング』と一緒で、文字から想像し、再現するしかありませんが、あぁでもない、こうでもないと料理を作るのは楽しいものです。

美味放浪記

『美味放浪記』は大きく分けて、国内篇と海外篇の二部構成です。

放浪記、南は九州は鹿児島。北は北海道、札幌・函館をこえ、釧路・網走まで放浪しています。海外篇はヨーロッパを中心に北アフリカ、オーストラリア・ニュージーランド、中国、韓国を放浪している様子が軽快な文章で書かれており、目をとじると、日本や世界のあちこちに飛びまわることができるでしょう。

気の向くまま、風に流されるように放浪し、その土地土地の料理を味わい、酒を飲む。食べた味や風景を読者にわかるように書く技術はさすが文豪と言いたくなります。檀一雄が楽しんで旅行をしている様子が、文章と文章のあいだからあふれていました。

『わが百味真髄』と同じで、『美味放浪記』も宝石のようなキラリと光るおいしい料理のヒントが書かれています。

『美味放浪記』からアイディアを得て、燻製した牛を使ったシチューなぞを作ってみました。

『美味放浪記』を読んで、一番印象に残った言葉はあとがきに書かれています。引用してご紹介したいと思います。

その飲食に向かう時に、何の先入観念も、何の偏見も、持ち合わせがなかった。

引用元:美味放浪記

何かを食べるとき、飲むとき、先入観念や偏見を持っているときがあります。自然体で食事と向き合い、自分の舌で料理を味わい楽しむ。料理を食べるときに、忘れないようにしたいものです。

火宅の人(上・下)

登場人物の名前はちがいますが、檀一雄を主人公にした私小説です。

次男が病気にかかるところから物語は始まります。最初に結婚した妻と死別し、再婚したことも知りました。『火宅の人』は再婚した時期の私小説です。最初の妻と死別する様子を書いた小説は『リツ子 その愛・その死』になります。

『火宅の人』を読んでビックリしたのが、檀一雄のイメージは家庭的で料理をするチチと思っていました。作中では、愛人を作って別居したり、あちこち放浪し自宅にあまり寄りついていない様子が書かれています。

じつは檀一雄さんはモテないだろうなと思っていました、失礼な話ですが。著者近影があまりモテそうではなかったので。

女性関係、別居、女性への暴力(反撃をくらっています)、犬をポイっと窓から捨てる。いまなら、大炎上しそうですが、おおらかな時代だったんでしょうね。

料理と酒を存分に楽しみ、女性とも遊ぶ。男の世間体という常識のリミッターをはずした自由に生きる姿は憧れますが、絶対できない生活でしょう。好き勝手やっているようで、きっちりと締め切りは守り、原稿を渡している様子が書かれています。基本は真面目で、律儀な人なのかなと思いました。

お金は稼いでいたようですが、お金を手にいれた瞬間から、酒と料理にお金が消えていきます。豪快すぎる、宵越しの金はもたない勢いです。

『火宅の人』の物語内でも、料理と旅をしています。商店街をまわり具材をあつめ、料理をする様子が見られました。長時間コトコトとシチューや出汁を煮込む様子が書かれています。『わが百味真髄』と『美味放浪記』の話は、この旅行のときの話かなと想像するのも楽しいものです。

『火宅の人』は檀一雄の著書の中で、一番売れた作品であり、遺作になりました。

水上勉が、『火宅の人』のあとがきで、檀一雄さんは小説どおりの人だったと書いています。誇張してなかったのかと、ビックリであります。

『火宅の人』は映画にもなっており、檀一雄さんの長女:檀ふみさんも出演されています。

檀一雄関連の書籍

檀一雄のお嫁さんを取材して書かれた『檀』、長女の檀ふみさんが書いた『父の縁側、私の書斎』、長男のお嫁さんが書いた『檀流クッキング入門日記 』の三冊を読んだ感想を書いています。

『火宅の人』は檀一雄ご自身の視点で書かれていました。『檀』は檀のお嫁さんの視点で書かれています。フィクションなのかノンフィクションなのか評価の分かれる本です。

沢木耕太郎さんが、お嫁さんに取材をして書かれた本です。お嫁さんの生まれから結婚、不倫、最後まで淡々とした文章で書かれています。文章から感じたのは、ヨソ子さんは本当に檀さんを愛していたのだなと思いました。

連れ子の長男さんがいて、自分で生んだ二男二女もおり育児で大変なのに、『火宅の人』の連載がはじまり苦悩している様子が書かれています。しかしヨソ子さんは、檀一雄をずっと愛していたようです。檀一雄さんは人から愛される性格だったのでしょう。人の悪口をけっして言わない人だったと書かれていました。

『檀』には檀一雄の最後の様子も書かれています。『火宅の人』のラストは未来は明るく、これかダといったエンディングです。まさか闘病しながら書いていたとは思いませんでした。文章にかける鬼気迫る執念を感じます。

父の縁側、私の書斎

檀一雄の長女の檀ふみさんが書いたエッセイ『父の縁側、私の書斎』

文才は遺伝するものなのでしょうか、読みやすく優しい文章、口角があがりクスっとさせるエッセイがおおいです。文才は遺伝ではなく、本を何冊も読んでいるように書かれています。本を読み、書くことが文章をよくする秘訣なんでしょうね。

エッセイのなかで、チチがいないのが日常、チチがいるのが非日常と書かれています。またチチの囲炉裏にネコのうんこをさせてしまったら、夜中にネコのうんこを片付けさせられたという話も書かれていました。それでもチチを嫌っている文章には見えません。檀一雄の人柄、魅力はどこからくるものなのでしょうか。

『父の縁側、私の書斎』で一番ビックリしたのは、檀一雄関係の話ではありませんでした。檀一雄さんの友人坂口安吾の話でした。

坂口安吾と言えば、この写真が有名ですよね。写真が撮影された場所は、檀一雄の家なんですって。よく人の家をここまで汚くできるなと。檀一雄の執筆部屋はキレイに整頓されている写真がありました。

坂口安吾とは仲がよく、長男と長女を結婚させようとしていた話がありました。檀ふみさんは2021年まだ結婚なされていないようです。苦労してきたハハを見てきたからかなと思ったりしました。

檀流クッキング入門日記

『檀流クッキング入門日記』を読みだすと違和感に気づきました。「あれ、お父さんのイメージが檀一雄さんっぽくないと」読み進めていくと、謎はとけました。

檀一雄の長男さんと結婚した晴子さんが書かれたエッセイでした。最初のお父さんは晴子さんのお父さんのことを書かれていたのです。

檀家に嫁いでから、檀一雄のことを書いています。『檀流クッキング入門日記』では、よいチチのイメージです。料理をたくさん作るから、食べにおいでと言ったり、料理を一緒に作ったり、教えたりしています。檀一雄関係の本で、檀一雄以外の本で最初に読んだのが『檀流クッキング入門日記』でした。この本を読んだことで、檀一雄=よいチチというイメージだったのです。

晴子さんは、檀流クッキング入門と書かれていますが、かなりの料理の腕前と推測されます。24時間寸胴で鶏の出汁をとる家はなかなかないでしょう。

『完本・檀流クッキング』は檀太郎さんと晴子さんの共著です。いまも檀流クッキングを楽しめるのは、太郎さんと晴子さんがいたからかもしれません。

檀一雄を読んだ感想【まとめ】

今まで読んだ檀一雄さんの本、檀一雄関連の本を紹介さしてもらいました。

檀一雄の本を読むと、旅行に行きたくなり、お酒を飲みたくなり、料理を作りたくなります。旅、酒、食べ物のどれかが好きな人にオススメです。

また人に好かれる性格だった檀一雄のエッセイの文章は、ときにはチチのように厳しく、ときにはハハのようにやさしい文章です。

『火宅の人』は、激情、沸騰、ドロドロと長時間煮詰んだスープのような文章でした。

いかがだったでしょうか、檀一雄の魅力を伝えることができたでしょうか。無頼派のなかで料理という特技をキラリと光らせ、料理を作る愉しさを教えてくれたのだ檀一雄でした。

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