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水上勉『 土を喰う日々 』『 精進百選 』レシピ再現記事 精進料理を作りたくなる2冊 土を喰うマネをする日々

料理

水上勉著の『 土を喰う日々 』と『 精進百選 』を読みとき、書かれているレシピを再現、そして食べた感想を書いている記事です。

目次のあとには、料理を作るのにあると便利な調理器具とよく使われる食材を紹介しています。

また、二冊の本を読んだ感想も書きました。

調理器具と食材、本の感想に興味のないかたは、目次から料理にとんでください。

『 焼きもの 』『 煮もの 』『 蒸しもの 』『 和えもの 』『 分類できないもの 』にカテゴリーをわけています。

レシピ数のおおさに、うっとなり1歩2歩さがられたかたもいらっしゃるでしょう。精進料理のおおくは、苦労することなく手早く作れます。なので、たくさんの精進料理を作り書けたのです。

冷えてもおいしい精進料理がおおいです。作り置きにも、お弁当にもいれられる精進料理。

日常に溶けこんだ精進料理の世界をおたのしみいただければ幸いです。

精進料理を作るのに用意しておくとよい調理器具

精進料理を作るにあたって用意しておいたほうがよいすり鉢。世間一般的には、もはや無用の長物といわれかねないすり鉢。

『 土を喰う日々 』の一月の章は、禅寺での想い出、修行について、精進料理をどのように学んできたか、料理の心構えをときます。

二月の章は、すり鉢の話の話からはじまります。とりあえず、すり鉢は『 土を喰う日々 』と『 精進百選 』の紙面のうえにて八面六臂の大活躍。

ごまをする、味噌をする、芋をする、豆腐をするなど、する、つぶす作業は、すり鉢ひとつですませます。逆に考えると、すり鉢ひとつあれば、ミキサーなどの調理器具が必要ではないということです。

余談ですが、文豪であり料理エッセイの先駆けであり料理エッセイの金字塔『 檀流クッキング 』を書いた檀一雄も、なにはなくともすり鉢を買うと、娘さんの檀ふみさんがエッセイで書かれていました。そして、檀ふみさんも、料理をなされないのに、なぜか、すり鉢を買っていたと。すり鉢は、文豪や日本人をひきつける無骨な魅力があるのかもしれませんね。

すり鉢の細かいミゾには食材が残ります。食材をかきだす調理器具があれば食材を無駄にしません。食材を無駄にすること、それは精進の道からかけはなれた行いであります。

レビューにも書かれていましたが、この調理器具は、ほんとに小さい。もうすこし大きくしてもらいたい、切実に。

つぎに蒸し器が必要になります。

せいろを中華鍋にのせたり、中華鍋にザルをいれて蒸しています。中華鍋であれば、焼く、蒸すのふたつの作業をこなせる優れもの。中華料理人は、中華鍋ですべての調理をまかなうと言われています。

豆腐料理に使う豆腐は水切りをしてから調理する料理ばかりです。水切りのたびにまな板やきれいな布を用意するのは大変です。

そこで土を喰うマネをするものは、このような文明の力を使い水切りをしています。

豆腐料理をよく作る、豆腐料理を作るたびに水切りをする人であれば、水切りが、こんなに楽になるのかと眼から水が切れることなく流れることでしょう。

中華鍋とすり鉢があれば、二冊の本に登場するほとんどのレシピは作れます。

まな板や包丁など基本的な調理器具は必要です。

精進料理でよく使われる乾物・食材

まずは、昆布。乾燥昆布。この昆布が精進料理の出汁の決めてになります。

そして、つぎに必要なのは、これまた精進料理の出汁の決めての干しシイタケ。干しシイタケは高いので、安い生シイタケを買い干したものを使っています。

この2つの乾物があればなんとかなります。

あとは高野豆腐や切干大根、ひじきなどの乾物があれば上々。

料理によく使われる食材は、豆腐や油揚げ、こんにゃく、湯葉などが登場します。

お安い食材で精進料理を作れるのです。さらに、健康によいと言われている食材ばかりではござりませぬか。

納豆が登場しないのは、水上勉の好みなのか、禅僧は納豆を食べてはいけないのか謎です。ほかの禅の料理本には納豆の料理はありました。

豆類もあればよいでしょう。木の実もつかいます。木の実のなかでは、とくにクルミと落花生の登場頻度が高いです。

クルミと味噌をあわせ食材にぬりつけます。このクルミ味噌が滅法界いけるんです。ふくよかな滋味ある甘さ。白や赤、信州味噌などあわせる味噌によって風味がかわります。

味噌の話がでてきたついでに、味噌は1種類でなく、何種類かそろえたほうが色々な風味をたのします。味噌を混ぜあわせお好みの味を探求するたのしみもあるでしょう。

精進料理の中心素材の野菜。そのときそのときの畑と対話して、相談して、野菜を収穫します。水上勉は、その場その場でレシピを組みたてます。

家庭菜園をしていますが、毎日の野菜を賄えるほどの収穫量はありません。なので、『 土を喰うマネをする 』のです。

『 土を喰うマネをする 』ものなので、スーパーで売っている野菜をもちろんつかいます。すこしだけ、野菜を買うまえに、この野菜の旬はいつなのだろうか、と考えてみる、それもまた精進なり。

土を喰うマネをしているモノです。なので、ベジタリアンではありません。かつお節も食べるし、牛・豚・鶏、鶏卵も食べます。なので、あくまで土を喰うマネをしているモノが書いている記事です。

『 土を喰う日々 』『 精進百選 』を読んだ感想

二冊に書かれているレシピは、精進料理がメインです。いまでいうベジタリアン料理です。

中国と日本には、昔から野菜を中心とした生類をつかわないレシピがありました。

中国の精進料理は濃、鮮やか。日本の精進料理は淡、素朴といった印象です。西洋の人間が、いまごろ大声でベジタリアン、ベジタリアンと大声で叫んでいる姿は、滑稽だなと思います。

素朴な精進料理は、ありふれた素材で作られています。日常に溶けこんだ精進料理です。

なぜ作家の水上勉が、精進料理の本を書いているのか。水上勉が禅寺で育ち、料理をした経験をもつ珍しい経歴をもつ作家だからです。

禅寺で教えられた料理方法は、食材そのものの風味と香りを活かし、食材の皮ですら無駄にしない(ケチともいえる)調理方法で作る精進料理。さらには、精進料理の心がまえ、丁寧な暮らしかた、そして、禅の真髄に近い考え方まで教えてくれます、直木賞受賞作家の水上勉が。

出版された順番は、軽井沢の生活を書いた『 土を喰う日々 』の出版が先です。『 精進百選 』を出版するまえに、水上勉は大病をわずらいました。作家仲間のダレもカレもが、水上勉はもうダメだと思ったそうです。

しかし、水上勉は病にうち勝ちます。そして、長野の北佐久郡に移住し作った料理と生活について書いたものが『 精進百選 』です。

大病をわずらった水上勉ですが、なんと80歳を超えるまで生きました。精進料理を作り食べたこと、それが長生きをした秘訣のひとつだと考えています。あなたはどう思いますでしょうか。

また、水上勉は畑仕事もします。電気をつかわない農作業は、とても力をつかいます。また、土をたがやしたり、水をはこんだり、雑草をぬくためにかがんだり、たいへんな重労働です。農作業をしているうちに筋肉もついてきたと書かれています。

料理だけでなく、体を動かすこと、手を動かすこと、これまた長寿の秘訣ではないでしょうか。

さらには、水上勉は、多筆な作家としても知られています。開高健いわく「1日に原稿用紙100枚から200枚」を書くと書いていました。とろろ汁とニンニクをすったやつを飲み、たくさんの作品を書いた水上勉。

文字をたくさん書きたい人は、水上勉の食事をマネをしてみるのはいかがですか。

晩年は万年筆を持てなくなったそうです。そこで、万年筆からワープロに、さらにマッキントッシュもつかいこなしていた水上勉。いまだにマッキントッシュに触りすらしていない水上勉よりアナログな土を喰うマネをするモノです。

頑固一徹に、愚直に万年筆にこだわらない柔軟な思考。日常的にレシピを組みあげ、料理を作っていたおかげで、柔軟に物事に対応できたのではと愚考します。そこにある食材で精進料理を作ることが、あるものをつかい作品を書くことにもつながったのではと。あなたはどう思います。

思考がカチカチに固まった老害と呼ばれたくないものです。精進料理を作り脳みそを溶きほぐしてやろうと思いました。

精進料理は抹香くさく、なんかエラそうに書かれているのでは、と思われるかたもいらっしゃるでしょう。水上勉の書く言葉はやさしいです。親身に、ていねいに、こうしたらいいのではないだろうか(たまに厳しいが)と教えてくれます。上から目線ではありません、弱者の目をもつ作家です。あくまで物腰のやわらかいお坊さんが、こうしたらいいんじゃないかと諭してくれるやさしい文章です。

それを一番かんじられる箇所は、水上勉が50年以上まえに作られた梅干しを食べたとエッセイに書いたところ、ある若者から「梅干しが50年も腐らずにいるか、ウソをつくな」と言われたそうです。しかし、怒るでもなく、梅干しの見た目から味までを若者に教えたそうです。「ふふん、作家は作り話がうまい」と若者は納得しなかったそうですが。

いまの時代にもバカでアホウで無知な若者はいます。ほうっておけばいいのに、『 土を喰う日々 』にて、梅と塩、紫蘇でつくられた梅干しは何十年年単位で食べられるのだよ、彼に伝わるといいなと書かれていました。

きちんと作った梅干しは、腐らずに後世にのこるのだ、生きた証として後世に梅干しをのこしたいと書かれています。真っ当に作った後世にのこる梅干しです。水上勉の梅干しにかける執念はおそろしいモノがあります。その執念をみた客は、梅干しを「おかわり」というのをためらったそうです。水上勉が漬けた梅干しは、今も現存しているのでしょうか。

どうせクダラナイ人生をすごすのであれば、後世にのこる梅干しを作ってみようじゃありませんか。真っ当な梅干しの作り方も書かれていますよ。

そして、別の作家が書いた100年前の梅干しの話や、義経公が漬けた梅干しの話になります。義経公の梅干しの話は、眉毛にツバをぬったほうがよいかもしれません。

二冊の本を読み、心境と行動の変化がありました。

まずひとつめ、食材に感謝すること、また食材の味を活かす料理を心掛けるようになりました。いただきます。ごちそうさま。いい言葉だったのだなとシミジミと思います。

ふたつめ、精進料理に精進するようなりました。料理の献立を考える、料理を作る作業に集中することは、修行であり、禅であり、いま風にいうならマインドフルネス。料理を作っていると、イヤなことを考えず素材にむきあっていると、心がフっと軽くなります。

調理に失敗したとしても、「タハッ シッパイ」したと笑い料理をたのしむ、その心掛けが大事だと水上勉には教えられました。

昨日の精進料理よりも、はやく、おいしく作れた、それは成長の証であり、精進した結果と言えます。料理を作り、成長する喜び、精進したという満足感。

ぼけ~と生きていた毎日でした。毎朝、今日はなんの精進料理をこさえてやろうかとワクワクし、調理に没頭、食べることに集中、一日一日の密度がみっちりと充実したものになりました。

精進料理を一日か二日ほど食べただけで健康になる、ということはありません。献立に精進料理をくわえだし食べてつづけたある日。あれ、体がかるい、首のコリがやわらかい、そして、いいウンコがでるようになったナと体調面に変化を感じました。

料理のレシピには、調味料の分量を書いていません。その日、その時の食材の水分を確認しながら味付けします。一品一品、食材にあわせた味つけをしましょう、それが精進です。私のレシピにも分量を書いていないのは、手抜きではありませんよ(ホントウカナ)。

コツとしては、すこし薄目に味付けをしたほうが調理に失敗しません。薄い味はあとから修正できます。そして、薄味になれてくると、食材そのものがもつ純な旨味を感じられるようになります。薄味になれてくると、外食の濃い味にタジタジとなるかもしれません。

もっともっと精進料理のレパートリーをふやしたい欲にとらわれ、どうせ作るならおいしい料理を食べたい、おいしい料理でおもてなしをしたい、これは煩悩なのだろうか。それは煩悩ではないそうです。

安心して、精進料理のレパートリーをふやし、おいしい精進料理作りに精進してもよいのです。

精進料理の精進は、心臓か脳がとまるその日まで続くでしょう。趣味のひとつとして、ずっとたのしめる精進料理。

もっと精進料理のレシピと調理方法を知りたくなりました。『 精進百選 』にて精進料理の神とまで書かれていた。梶浦逸外著の『 精進料理口伝 』を買い読みました。

化学調味料を否定しない人間です。『 精進料理口伝 』では、化学調味料をひんぱんに使っています、きんぴらごぼうにまで。

「いやぁ、さすが禅寺の精進料理はおいしいですね、味つけの秘密はなんでしょうか」

「化学調味料です」

「あっ、そうですか」と、ちょっとショボンとならないでしょうか。

考えかたをズラせば、化学調味料を使うなんて邪道だと言われたときに、精進料理のえらい人も化学調味料を使っていたと反論できますね。

『 精進料理口伝 』には、石綿をつかった調理器具を使うとよいと書かれていますが、え、大丈夫なのと思いました。

水上勉のレシピには、化学調味料が使われていません。水上勉の料理のほうが舌にミートしました。

水上勉の2冊の本には、懇切丁寧に料理方法を書かれていません。水上勉のレシピは、『 精進料理口伝 』で書かれている料理がおおいです。作り方がわからない料理の作り方を『 精進料理口伝 』にて確認できます。

レシピは豊富、そして実地で学んだ経験が書かれており、まずは実践より習うほうがよいと書かれており、まさにその通りと、ためになる話もおおい本ではあります。『 精進料理口伝 』は、情報の取捨選択が必要な本。

典座(てんぞ)(寺の飯炊きなどをする役目)をするものは、精進料理の本を二つぐらいお手本としてもっておかなければいけないと書いた水上勉は『 精進料理口伝 』をお手本にしていました。

私のお手本は『 土を喰う日々 』『 精進百選 』です。

精進料理に、もっと精進したいかたには、豆腐百選や蕎麦百選といった本もあります。どこかの禅寺には原本が売っているそうです。こちらの本は、現在の人間が料理を再現し食べた感想を書いています。

精進料理でないレシピも書かれていました。また、百にするために無理くり書いただろうと思わされるレシピもあります。

江戸時代の人間の空気と茶目っ気と歴史を感じられ、こんなオモシロイ料理をしていたのかと驚かされる2冊です。

また、くりかえしになりますが料理をすること。それは修行をすることと同義です。いにしえのインドの王族が悟りをひらいたように、悟りをひらける可能性があるのです、料理を作っていると。

そのあたりのことは、むずかしいので、いまだ勉強中ではあります。

発露(ほつろ)の力罪根(ざいこん)をして、銷殞(しょういん)せしむるなり。

『 土を喰らう日々 』には、真の高僧は、どこにいてもたのしみを見出すと書かれています。精進をするために深い山奥や静かな田舎に行く必要はなく、どこにいても精進はできる、スーパーのビニール袋のなかにも土の味はある、そのようなことが『 土を喰らう日々 』には書かれていました。

スーパーで買った野菜とむきあえば、それは、あなたの土の味なのです。

さぁ、土を喰うマネをはじめようじゃありませんか。

焼きもの

くわいの焼き物

くわいを洗い、炭火でじっくりと焼くだけの料理です。水上勉の代表料理のひとつだと思います。

炭火でゆっくりとくわいを炙るだけです。料理が苦手なひとでも作れるでしょう。

くわいをあまり動かさずに、じっくりと炙ります。炙っていると青く光っていたくわいの皮が黒くりなります。

皮が黒くなればくわいを転がしてください。

黒くこがしていると、くわいから小鳥がさえずるような小さい心地よい音が聴こえてきます。

音が聴こえるだけでなく、干した肉を焼いたような香りがしてくるのです。

くわいのなかで渦巻いていた旨味の蒸気がふきだし、くわいの黒い皮がやぶれます。くわいの焼き物のできあがりです。

くわいの焼き物は塩で食べます。けれども塩をふる必要がないほどの力強い旨味があります。

包丁で半分に切り提供すると書かれていますが、黒い皮をけずり食べました。

クリのようにほっこりとした食感です。ただし甘くはありません。ギュッと拳をかためたような力づよい滋味ある旨味です。

くわいの舌にこびりつく苦味は、肉にふりかける香辛料のような風味になっています。

このくわいは生きています。土からほりだされ、炭火で焼かれたくわいは、精進肉とよびたくなる香りと風味になり不死鳥のように生きかえります。

皮を厚くむかれ煮たくわいは、死んでいるように感じられるようになりました。

くわいを焼く時間は30分ほどでしょうか。くわいの認識がかわること間違いなしの精進料理です。

野菜の七輪焼き

『 土を喰う日々 』で紹介した『 野菜の七輪焼き 』著名人たちも「うまかった」と絶賛した焼き方。

作り方は、いたって単純明快。炭をいこらした七輪に焼き網をのせ、皮をつけたまま野菜を焼く、これだけです。皮の汚れはたわしでこするだけ、あとは気ながに七輪で焼いていきます。

皮が焦げてもかまいません。むしろ、焦げたほうが土の香りがひろがるでしょう。皮が炭化したら、ころりと転がす、大名が焼くように、あまりいじらず鷹揚に焼くのがコツ。

皮ぜんたいが炭化し、ぷ~んと土の甘い香りがしてきたら出来上がり。ふたつに割り器に盛りつけ、塩を野菜の横にチョンと盛りつけるとよいと書かれています。

焦げた皮と、実のあいだに空間があいているのがわかるでしょうか。皮でくるまれていても、これだけの水分がぬけたようです。里芋なぞ、どこにもころがっている野菜、されど、炭火でゆっくり焼いた里芋これ御馳走なり。

しっとりとしている実は、切った包丁にくっつきます。キメが細かく細胞ひとつひとつが、むっちりと結合しています。やわらかく、口のなかでほどけるような甘さ。クリームチーズをのばしたような、はんなりとした精妙な甘さ。そこに塩をすこしふりかけると、甘さが。

ジャガイモや大根もいけます。ジャガイモの水分がぬけ、鏡のように清らかになった断面。このジャガイモ、ほっくりというよりも、静かに水分がぬけ、しっとりといったお上品な口あたりです。

大根は、焼かれたことで野趣をおびた香りとなっています。大根は皮をむいてから焼いたほうが好きです。かっちり焼かれた外側と、お汁をたくわえた内側の対比がたのしいのです。

ジャガイモにバターや酒盗をのせると、それは、それは、もう。

コンロにのせると遠赤外線がでるといわれている商品もあります。

しかし、熱くなりすぎると火が消えるガスコンロには使えませんでした。

蕗のとうの味噌焼き

蕗のとうをむき、塩水でサッとゆでましょう。煮すぎないことが肝要と書かれています。

蕗のとうの苦味まで抜けてしまってはダメだからです。苦味がダメな人はしっかりとゆでるとよいでしょう。

ごま油を塗り七輪で焼き、味噌を漬けて食べます。もろみ味噌があうと書かれていました。お家にあるお味噌を塗りつけいただいてください。

蕗のとうの苦味、青き苦味、春の先兵といった苦味を堪能できるレシピです。料理とは引き算、食材の苦味をしっかりと引きだすことこれ妙味。

蕗のとうを焼いていると、青い地球を焼いているように感じると書いている水上勉。ちいさい蕗のとうと青くでかい地球との対比を思い浮かべつつ、冷涼な酒を呑むたのしさよ。

里芋の醤油焼き

里芋などの皮をむき、ちいさいものはそのまま、おおきいものは食べやすい大きさに切ります。海水よりも、すこしうすめの濃度の塩水に1時間ほど漬けましょう。里芋のぬめりをとるため塩水に漬けます。さいきんの里芋は、ぬめりが少ない品種がおおいように思います。

炭火や遠火、フライパンで里芋を焼いていきましょう。味噌や日本酒、ミリンを混ぜず、醤油いっぽんで焼く珍しいレシピ。

醤油の焦げた匂い、醤油をぬられた里芋の実。醤油と里芋の朴訥とした自然な香りが混ざりあい、ひとつの調味料のような香りになります。

焦げた表面は芳ばしく、醤油の風味が強く塩辛く感じられます。しかし、里芋の中央はほっくりと甘いです。塩辛さと甘さがお口のなかで混ざりあい、ほっくりとした甘さを堪能できます。里芋と塩、醤油、材料はこれだけと思えない強い甘さがあります。

大根の風味焼き

大根を1cmから2cmほどの厚さに切ります。皮をむいたほうが上品な仕あがりになり、皮をのこすと野趣あふれる仕あがりになります。

大根をまずは蒸しましょう。お好みの味噌をミリンや日本酒でのばしタレを作っておきます。

竹串がスーッとはいるようになった大根、火傷に注意しながらタレに漬けましょう。大根の両面にこってりとタレをつけフライパンで焼きます。味噌の焦げる香ばしい香りがしてくるまで焼きましょう。しっかりと味噌に焦げめをつけるのはたのしいものです。

器に盛りつければ、大根の風味焼きの出来上がり。

なんだ、こんなものか、と思われたかたもいらっしゃるでしょう。

ほくほくと白い湯気をたてている大根を箸で切る、三角になった大根を口に運びます。外側のしっかりと味噌の風味のある部分と、大根の芯の純な部分の透明なお汁がお口のなかで混ざりあいます。大根本来の自然で透明な純なおツユが滴りほとばしるのです。

蒸す、焼くだけで、大根料理の頂点となりうる料理を作れました。蒸す、焼く、この手順いいものですゾ。

大根の皮の漬もの

大根の皮は、むくように書かれています。ただ、大根の皮の再利用方法は書かれていません。

調理をはじめたばかりの人にとって、大根の皮を薄くむくのはむずかしいものです。

どうしても厚くむいてしまいます。いいんです、厚くむいても。

厚くむいた大根の皮をあつめ、熱湯をかけます。水気をきって、麺つゆや醤油、ミリン、日本酒に漬けこみましょう。お好みで柚子の皮や唐辛子をいれてもよいです。

冷蔵庫にいれた次の日から食べられます。ポリポリとしたかろやかな食感があり、大根の涼といった爽やかさを感じられる漬ものができています。厚くむいたほうが食べごたえがあるのです。

料理初心者さん、どんどん大根の皮を厚くむくとよいですぞ。たまに薄くむく練習をすれば、なおよしですぞ。

このレシピは、きくち正太著『 あたりまえのぜひたく。』より。

大根の田楽

大根をお好みの形に切り、味噌汁にいれ柔らかく煮ます。あまり柔らかく煮すぎると、崩れやすくなります。大根の柔らかさを見極める、それ精進なり。

柔らかく煮た大根を崩れないように焼きあげます。お好みの味噌をすり鉢ですっておきましょう。

大根にたっぷりと味噌をぬり器に盛りつけます。火傷に注意しながら、ガスバーナーで味噌をあぶるのもまた一興です。

これを提供されて、喜ばない左党はいないと思います。大根を味噌汁で煮る、焼く、すった味噌をぬりつける、中国の蘇東坡が考案したトンポーローなみの手間がかかっています(すこし言いすぎか)。

馬鈴薯の田楽

馬鈴薯(ばれいしょ)ジャガイモのこと。田楽なので、焼き料理にいれています。しかし、煮る、つぶす、そして、もう1度煮る、揚げ、やっと焼く料理。テマヒマのかかる精進料理です。

マッシュポテトを小麦粉とねりあわせ、お湯でゆで、揚げ、焼くと思ってもらえば間違いないでしょう。揚げる作業は、はぶけると考えています。

ジャガイモで作った揚げ団子の田楽といったお味、さっくりとした表面は芳ばしく、なかはほっくり。たのしい料理です。ただし、作るテマヒマはかかります。提供されたのであれば、調理してくれたかたに感謝を。

ゆでたジャガイモを串に刺し焼き味噌を塗った簡易版も紹介されています。こちらはジャガイモの素朴な風味そのものです。作るのは、とても楽ですね。

蕗のとうの田楽

蕗のとうをゆでたのち細かく切り、味噌や砂糖などと混ぜあわせ田楽に塗りつける一品。

春にしか味わえない田楽、ともうせば価値もあがるというものです。

味噌や調味料は、お好みのものを混ぜればよいと書かれています。白味噌と混ぜあわせました。残雪の横に生える蕗のとうのような描写を田楽のうえに描きました。

塗りつけるのは、豆腐でも芋でもコンニャクでもよいと書かれています。ほろりと苦い蕗のとうの苦味と遠火で焼かれた豆腐の白い風味が口のなかで混ざりあいます。清雅淡泊なお味は春の訪れを感じさせてくれるでしょう。

擬勢豆腐

擬勢とは、なんとも疑わしそうな名前がついている料理名ですが、なんてことはない揚げないひりゅうずと思ってもらえば大丈夫です。揚げないので、油の処理が必要ありません。ひりゅうずよりも、楽に作れるこちらのほうが食卓にはよくのぼります。

水を切った豆腐をなるべくなめらかにしましょう。ボウルや裏ごし器をつかい豆腐をなめらかにしておきます。豆腐を手でくだいたぐらいでは、焼いたときにまとまりません、

細かく切っておいたニンジンやキクラゲなどの食材を炒め、塩と砂糖で味をつけておきましょう。

なめらかにした豆腐と味つけした食材をまぜあわせます。玉子焼きフライパンなどで形よく焼きあげます。両面しっかりと焼きあげ形をととえましょう。豆腐をなめらかにしておけば形はまとまるでしょう。

豆腐をしっかりとなめらかにしておかないと焼いてもまとまりません。

横着をするものではありません。日々是精進。なにごとも手をぬいてはいけませんゾ。

ごぼう、にんじんのきんぴら

きんぴらといえば、おもい浮かぶ、ごぼうとにんじんのきんぴら。

ごぼうとにんじんを細くきり、ゴマ油をねっしたフライパンにいれシャンシャンと焼きつけます。ラードをいれると味が濃くなります。しかし、精進料理にはなりません。

醤油とミリン、砂糖で味をつけると書かれています。醤油とミリン、日本酒で味つけをしました。

ごぼうがシナッとしてきたら、香りのよいゴマ油をふりかけ器に盛りつけます。

そのまま熱々を食べてもよし、冷えてもよし、七味など辛味をふりかけて食べてもよし、好きなように食べるとよいでしょう。

ごぼうの滋味ある香り、ごぼうのパリッとした食感を残したきんぴらが好きです。

たんじゅんな料理のきんぴら、ゆえに精進する余地が多々あります。

おから

水上勉流のおからは、はらりと粉雪のようにしあげます。

ゴマ油をフライパンにいれ、おからを炒め水分を飛ばします。おからをとりだしましょう。ゴマ油をフライパンにいれ具材を炒めます。

具材はお好みのものをいれるとよいでしょう。コリッとした食感のゴボウやニンジン、レンコンがあると食感の変化をたのしめます。

ふわりと軽いおからは舌のうえにのり消えるようであり、雪が解けたあとの土の喜びの歌をゴボウやニンジン、レンコンたちが奏でてくれます。

大根葉のきんぴら

大根葉を醤油と日本酒で炒める大根葉のきんぴら。しあげにゴマをはらりとふりかけます。

からりとしあげると書かれています。大根葉は水分たっぷりです。しばらく炒め、水分を飛ばしてから調味料をいれるとよいでしょう。

大根のヒネたり、辛かったりする味ではなく、太陽をたっぷりと浴びた陽気な苦さ、清潔な苦さとでいうべき愛する葉物。土に隠れている野菜から生える葉は、おいしいものがおおいと思います。ニンジンやカブなどの葉もおいしいです。つねひごろからその青く新鮮な葉を味わいたいものです。

しかし、土を耕している人であれば、大根葉を手にいれるのはたやすいことでしょう。しかし、喰うマネをしているものは大根葉を手にいれるのに苦労します。

そこで、大根の葉のついた部分を輪切りにし水に漬けておくのです。力づよく緑の葉がニョキニョキと生えてくるでしょう。生命力のすごさをまざまざと見せつけられます。1日に1~2度は水をかえてください。水をかえねば変な匂いがしてきますゾ。

育てあげた大根葉と唐辛子とあわせ辛さに階段をつけると、お肉料理などコッテリした料理のつけあわせにピッタリなものになります。

土を喰うマネをする生臭でございます。大根葉とちりめんじゃこの相性は滅法界よいものです。

細かく切った大根葉のまわりを海の最小単位のちりめんじゃこが飛びはねています。小エビなどを追加してやれば、タイやヒラメではありませんが、ちりめんじゃこと小エビが竜宮城で踊りあかします。

この味、玉手箱をあけた浦島太郎では食べらない濃い硬さのあるうまみ。

焼きねぎ

冬の熱燗酒のあてはこれにかぎる。

引用元:精進百選

白ねぎを焼いただけの料理です。白ねぎの質しだいで、なにものにも負けない強い風味になったり、とろんとろんに甘い味になったり、部屋に充満するかんばしい香りがたったりと、要するに白ねぎの質によって味と香り、風味は変化します。

どっしりと重く水分がつまった白ねぎを弱火で焼いていると、表面はかんばしく焦げだし、白ねぎの年輪からは、潔白なお汁が染みでてくるでしょう。焼きかげんは、白ねぎの清涼な食感をのこすのか、とろけるように甘くなるまでクタクタに焼くのか自由にしてください。

白味噌をぬりましたが、醤油だけでもよく、またショウガ醤油や七味、ゴマ油などいろいろと変化させられます。

長い白ねぎを手に持ち、そっと出来上がった味の地図を頭に描く。

野沢菜のにんにく炒め

野沢菜をゆで、水を切っておきます。野沢菜の漬物でも作れます。酸っぱい野沢菜の風味とニンニクの風味の相性は、臭い仲のようによいものです。

ニンニクを油で炒めて香りをだし、野沢菜をくわえます。醤油と日本酒をすこしいれ水分がなくなるまで炒めましょう。

しっかりと焼くことで、野沢菜にあるぷ~んとくる野生の風味が強くなります。

ご飯にも、お酒にもあう料理です。野沢菜は育てやすい葉物です。わが家では漬物から炒めものと、八面六臂の活躍をみせてくれます。

ピーマンと油揚げ

わざわざレシピにするほどか、と思われたことでしょう。わかります。

ピーマンと油揚げを麺つゆで煮ればいいのでは、と思われたことでしょう、さにあらず。

水上勉流のピーマンと油揚げは、ピーマンと油揚げだけを先に焼いておきます。炭火で焼くのであれば、仕上がりがグッとよいものになるでしょう。

青緑のピーマンの皮がよじれ、黒くなり、しわがはいるまで炒めます。油揚げもパリッと焼きあげておきましょう。

そして、醤油と酒、みりんでひたし汁を作っておきます。砂糖もお好みでいれると書かれています。酒のアルコールは火にかけ飛ばすのか書かれていません。アルコールに弱いひとは火にかけ飛ばしておきましょう。

焼いたピーマンと油揚げをひたし汁にいれ出来上がりです。焼きたての湯気をたてているピーマンと油揚げをひたし汁にジュンといれるのは乙でございます。

ペチャッと舌にくっつかない甘さと苦味があり、油揚げの力強い肉のような食感をたのしめます。

生湯葉の網焼き

生湯葉をひろげ、網にのせ炭火で炙ります。大根をおろし、醤油をちょんと落としたものをそえましょう。

生湯葉を豆乳から作ることはできます。ただし、破れたり、シワがよったり、なかなかむずかしいものです。喰うマネをするものは生湯葉を買いました。

生湯葉を炙ると、香りは芳しくなり表面はカリッとしてます。内側はむにゅとした生湯葉の食感がのこっています。ふたつの食感をたのしめる一品です。

しっかりと炙れば、イカをのばしたような、タタミイワシのような味のおつまみになります。

そのまま食べるのもよいですが、すこしかわった趣向の一品は、眼と鼻、舌を喜ばせます。

煮もの

無名汁

自然の野合の乱舞である。熱いところを、汁も多量に大椀(おおわん)にもりつけて出すと、雪山で凍えてきた客はふうふういって舌つづみだ。

引用元:土を喰う日々

水上勉の代表料理のひとつにあげられる無名汁。

なんとも諸行無常を感じさせられる名前のお汁です。ところが、鍋にいろいろな具材をザックバランにいれ煮こむ豪快でありながら、素材そのものの味をひきだし、体と心を芯から温めてくれるお汁です。

たっぷりの野菜から染みでた、地球のように丸い甘味、母なる大地のように温かい風味。野菜たちの栄養がワーッと静かに騒ぎます。野菜の栄養は、体の細胞ひとつひとつに染みこみ日々を生きるカテになります。食べ終わると思わず野菜に感謝をささげたくなる一杯です。

なんどか無名汁を作りました。里芋をいれたほうが、滋味が強くなり、お汁にまろみがでます。里芋は皮をケチくさくむきながら、下ゆでもせずそのまま食材と煮ます。

お鍋に昆布をいれ、冷蔵庫にはいっている野菜をとりだし、好きな形に切りましょう。こんにゃくは手でちぎり不揃いな形をたのしみます。

ことことと弱火にかけておきましょう。グラグラとした火にかけると、野菜たちの栄養と風味がふき飛ぶように感じます。

土を喰うマネをするものは、保温料理で煮こみます。

さいごに水を切った豆腐を手でくずしながらいれ、味噌や醤油、塩で味をととのえます。

無名汁にうどんをいれて煮こめば野菜をたっぷり摂取できます。

人間の活力になる炭水化物と野菜、豆腐などのタンパク質を摂取できる理想の一品。

納豆のかおりですらも、野菜たちの風味は穏やかにうけいれてくれます。

納豆のねばりが野菜にまとわりつきポタージュのようになります。

けんちん汁

どこのご家庭でも作りやすく、それでいて体の芯から温められるお汁、けんちん汁。

豆腐を手でつぶし、ゴマ油で炒めます。たっぷりの野菜と炒めた豆腐、油揚げの千切りなどを昆布だしで、ことことと煮ましょう。

味付けは、醤油と砂糖、日本酒、ミリンと書かれています。すこし味噌をたすのが好きです。

大根とにんじん、ごぼう、里芋、とくに味の染みこんだ里芋は絶品と書かれています。わたしは長ネギをいれるのが好きです。素材がそろっていれば、上々のけんちん汁ができるでしょう。しかし、なんのかんのと素材がなくとも昆布だしでコトコト煮てやれば、野菜のダシが染みでてくるので、おいしいものができます。

手元にある食材で、そのときにつくれる最上のものを目指す、それもまた精進。

松茸と昆布の佃煮

松茸と昆布をことことと煮る、といえばぜいたくなものとなったが、何といっても、これはつくだ煮の王者だと思う。

引用元:土を喰う日々

松茸と昆布、そこに山椒をちらすのが好きです。松茸のあの香りが霧散しているように感じます。しかし、醤油と昆布だけでは、けっしてだせない風味がそこにはあるのです。清潔な腐葉土のあたたかく、ほのぼとした森林浴的な旨味といった松茸の風味でしょうか。

昆布は溶けるように柔らかくせずに、ほどほどのしっかりとした食感をのこし煮こみます。松茸のくにゅっとして、ぐにっとした食感の対比をくらべるたのしみ、まさにつくだ煮の王者といった味だと思いしらされます。

ほかほかの白米ののせると、松茸の香りが、むっくりと勃起するように感じられるのです。松茸ひとかけ、昆布ひとかけで茶碗の1杯や2杯、ペロリと食べつくしてしまいます。また、あつあつのほうじ茶やお湯をかけお茶漬けにすると、それは、それは、もう。

さて、この記事を書いているモノは、土を喰うマネを自称しています。

つまり、松茸もマネです。香りもマネです。松茸はエリンギ、香りは永谷園のあの商品をいれ煮ます。

山椒のシビれぐあいは人の舌をシビれさせ、松茸かエリンギかの判断をにぶらせる効果があると思っています。エリンギは、ほんものの松茸を切るように、うすくうすく切るのが肝要。このうすさ、松茸かと人をだます効果があります。

しめじの網焼き

焼きあがったらさっと酒をふりかけるのが妙味の出所。スダチを添えれば天下の一品。

引用元:精進百選

スダチが添えられていないので天下の二品。

写真をご覧になられたかたは、なんだこの粗末で質素で見栄えのしない二束三文の料理はと思われたことでしょう。わかります、わかります。

炭をいれた七輪にてしめじを焼くだけの料理です。焼く炭の種類のちがいもありますが、炭で焼かれたしめじの香りは瀟洒なものなります。しめじの水分が落ち、炭の熱で蒸発、水蒸気になったしめじの香気は、焼かれたしめじのなかに還元されるのです。

すこし焦げたしめじ、そこに酒をふりかけ、柑橘系の果汁をかけてやれば、それはそれは、ね。

ひじき

からりと煮るのがぼくの好みだ。

引用元:土を喰う日々

ひじきをもどし、フライパンでからりと煮ます。煮るというよりも焼くようにしあげるとうまくできます。

醤油とミリン、日本酒を2:1:1を少量いれ、からりとなるまで水分を飛ばしましょう。

からりと煮ようとすると焦げるおそれもあり、からりと煮るのには精進が必要。器の下にお汁がのこっています。

油ぬきした薄揚げや、炒めたニンジンを混ぜこむと風味がひろがり、食感もたのしいものになります。ニンジンは最後にくわえ軽く混ぜるだけにすると、赤色が黒くにごりません。

大豆の昆布煮

乾燥大豆をひと晩ほど水につけておきます。あわせて別容器にて、大豆がつかるほどの水に昆布をつけておきます。

昆布をつけた水にひと晩水につけた大豆をいれコトコトと煮ましょう。

土を喰うマネをするモノは、保温調理器具を使います。

大豆が柔らかくなれば、醤油と砂糖で味をととのえましょう。

私はこの大豆の昆布煮が好きで、総菜の親分のように思うのだが。

引用元:精進百選

大豆だけでなく、主張しない奥ゆかしい昆布の風味がほのかにある大豆の昆布煮は、親分というよりも、主役の邪魔をしない渋い役者のよう感じます。

食卓になくても気になりませんが、どこか寂しさを感じられる、そのような味です。そして、大豆の昆布煮が食卓にあると心がストンと落ちつくのです。

茶筅(ちゃせん)茄子

茶筅とは、お茶のお稽古で濃茶をしゃかしゃかしているあの道具を思い出してください。

茶筅にしては、線が太すぎないか、はい、精進不足でございます。

昆布だしに醤油や酒、みりんをいれ切れ目をいれた茄子を煮ます。そして煮汁とは別にして冷蔵庫で冷やしておきます。煮汁も冷やしておくとよいです。

食べる直前に冷蔵庫から茄子と煮汁をとりだし、お茶の道具の見えるように盛りつけ煮汁をかけまわします。

この茄子、食べると、口のなかで、澄んだ透明な泉になり、そして、舌の細胞に染みこみ消えはてます。口のなかに残るのは、涼の一文字のみ。

むしむしと暑い日、茶筅茄子があればそれだけで。

里芋と厚揚げとこんにゃくの煮しめ

里芋と厚揚げ、こんにゃくを昆布だしと醤油、酒、砂糖で煮つめる素朴で味わい深い一品。

ころりとした里芋の表面にはしっとりと味が染みこみ、ぽってりとした白い潤味が内側にはあります。厚揚げのなかからはホカホカの出汁も染みでてくるでしょう。こんにゃくは少し焼きめをつけ煮てやると食感がたのしいものになります。

甘く煮つめるのか、淡く煮つめるのか、その日の天候や気温によって味付けに変化をつける、それがアキのこない料理を作る精進。

里芋、ひりゅうず、ごぼう、こんにゃくの煮しめあんかけ

厚揚げをひりゅうずにかえ、ごぼうを追加でいれた料理。

ひりゅうずで煮しめを作ると、わっしょいと味がにぎやかになります。ひりゅうずにいれられた食材の食感、ごぼうの土にちかい香り。味が濃くなります。

寒い日などは、醤油や砂糖、みりんで味をととのえた昆布だしに葛でとろみをつけ煮しめにかけるとよいと書かれています。おろししょうがをそえてやると、寒いにはとてもよろこばれる一品になるでしょう。

いろいろな食材、ニンジンやタケノコなどいろいろと追加できるでしょう。また、いろいろな芋を里芋のかわりに使えます。

真のうどん豆腐

豆腐百珍の百番目のレシピ『 真のうどん豆腐 』

豆腐をまるまる煮たものとちがい、食べるのに神経をつかい、口にいれるとサラリとほどけるような食感はたのしいです。しかし、絶品というほど絶品かと言われると首をかしげざるをえないです。

『 土を喰う日々 』に書かれているように絹糸で豆腐を切るなど本格的にやれば、また違った食感になるのかもしれません。

ふたつの鍋を用意し、お湯をわかしておきましょう。ひとつに麺状に切ったうどんをいれゆでます。そして、温めておいた器にいれましょう。豆腐をゆでなかった鍋のお湯を豆腐のうえに注ぎます。

うどんにいれる薬味を用意すれば出来上がり。話のネタにはなります。そして、精進すれば絶品になるかもしれません。

はんぺん豆腐

長芋をすったものと豆腐をすったものを混ぜあわせお湯でゆでて作るはんぺん豆腐。

混ぜあわせる量は長芋と豆腐は同量と書かれています。長芋をたっぷりといれるのを好みます。塩をふって食べても、あんをかけてもよしです。ふわっとした花びらのように優しく、淡雪のように溶けるはんぺん豆腐。

はんぺん豆腐では、名前が野暮ったすぎるように思います。淡雪豆腐や細雪豆腐などと、はかない名前をつけたくなります。

お湯でゆでるときに美濃紙に包むと書かれていますが、サランラップで代用しました。

大根の柚子味噌煮

かんたんに作れる、しかし、大根料理の王者の風格をそなえた大根の柚子味噌煮。

大根2cmほどの厚さに切り、お湯でゆでてます。ゆでているあいだに柚子味噌を作っておきましょう。

昆布だしに味噌と砂糖をくわえます。柚子の黄色い皮をすりおろしくわえましょう。柚子味噌は沸騰させないように弱火にかけます。柚子味噌がぽこぽこと温かくなってきたらゆでた大根をくわえましょう。

わたしは、最初から2cmより薄くきり、柚子味噌に直接いれ煮るようになりました。一皿用にとりわけていますが、土鍋いっぱいに作り個々人に提供するのもこれまた一興でございます。

ほんのりと甘い風味の味噌のなかに、チカりと黄色い柚子の香味が光ります。じゅんわりと味の染みた大根に白い部分はのこっていません。だが、それがいいのです。大根の純ともいえる清潔な風味と味噌の甘味、柚子の清涼な香りが鼻をぬけていきます。

ことことと長時間煮こむ時間は必要ですが、かけた時間以上のお味を堪能できます、大根の柚子味噌煮は。

大根の胡桃味噌かけ

大根を1cmから2cmの厚さに切り、皮をむきます。昆布を鍋にしき、大根をのせる、大根がしっかりとつかる水を鍋にいれましょう。大根がゆらゆら動かない火加減にて、ことことと大根を煮ます。ころあいを見はからい竹串を大根にさしましょう。竹串の先に抵抗をかんじなければ大根を鍋から形を崩さないように器に盛りつけます。

胡桃をすり鉢ですります。味噌や砂糖、ミリン、日本酒で味をととのえ大根にぬりつけましょう。

大根は淡泊なお味、味噌は濃いめにしあげるとよいと書かれています。客にあわせて味を調整する精進も大事と書かれていました。

大根の素朴そのものといったお汁と胡桃の芳ばしい香りが混ざりあい、たいへんお上品なお味にしあがっております。大根と胡桃と調味料、これだけで、この味をだせるとはと、眼をみひらかされました。

大根のあんかけに味噌あしらい

大根を輪切りにし、椎茸だし、もしくは昆布だしで柔らかく煮ておきましょう。

すり鉢にて味噌をすりおろしておきます。数種類の味噌を混ぜあわせたり、砂糖をいれたり、お好みの味になるように調整しておきましょう。

大根の味付けは薄いです。濃い味の味噌があうように思います、また、濃い味の味噌があうとも書かれています。

大根を煮たお湯にトロみをつけ、器に盛りつけましょう。味噌をかけてやれば出来上がりです。

純朴で純真な白い大根と、こってりとした味噌の対比をたのしめます。濃い味噌の風味と淡い大根の水分が口のなかに混ざりあい完成する一品です。

大根と油揚げの煮もの

大根を短冊に切ります。油揚げもおなじ太さに切っておきましょう。

大根を昆布だし、もしくは椎茸のだし、はたまた両方のだしで煮こみます。油揚げは好みの問題になりますが、いっしょに煮ても、あとから加えてもよく、また油ぬきをせずにいれてもよいです。油がよい塩梅の旨味になります。

煮こみながら味を染みこませるのですが、なるべく味は薄くしたほうが失敗しません。薄味は調整できます。醤油やミリン、酒で味つけしましょう。おとしブタをし、ことことと煮こんでください。

油揚げの旨味が、白い大根に染みこみ、淡く、それでいて旨味がしっかりとのっているお味です。

このレシピは、さらりと1行、2行だけ書かれている見逃しかねないレシピです。

また、大根と油揚げを細くきれば、食材のあいだに空気がはいったように食感もかるくなります。

濃い料理のあいまに、食べるのにぴったりです。舌の疲れがとれるような淡味。

かぶらの煮つけ

やわらかく煮ると舌のうえで溶けるかぶら。ほんのりとした典雅な甘味があります。

かぶらをお好みの大きさに切り、ことことと煮てやればよいです。お味のほうは、かぶらの種類にもよりますが、昆布だしと塩と醤油だけで十分でしょう。

かぶらは、かぶらだけで完の璧な味の円が完成するのです。土のなかで白く熟成されたような甘味、舌のうえで淡さと儚さをもった典雅な甘味はしずかに溶けます。

馬鈴薯の粉ふき

小粒の芋、もしくはサイコロ状に切った芋をたっぷりのお湯で30分ほど煮ます。竹串がスッと刺さるまで煮ましょう。

芋をザルにあげ水気を切ります。ゆでた芋を熱した鍋にいれころがすわけですが、ここで注意事項がひとつ。テフロン加工などをしている鍋だと加工がはがれる恐れがあります。鍋は熱につよいかご確認ください。

熱した鍋で芋をころころところがしていると、ほっくりとし、表面に白い粉が浮きあがってきます。塩と胡椒で味をつけ器に盛りつければ出来上がりです。

白い湯気がたっている芋を食べてもよし、しっとりと落ちついた芋を食べてもよしの、芋ほんらいの素材の力をひきだした素朴であきることのない料理でございます。

ほっこりとした食感、食べたひとはにっこり。

馬鈴薯の甘露煮

ちいさい芋、もしくはサイコロ状に切った芋を竹串がスッと刺さるまでゆでます。芋をザルにあげ水気を切っておきましょう。

醤油と砂糖と同量の水をくわえ煮汁を作っておきます。水気を切った芋を煮汁にいれ30分ほど弱火で煮ましょう。火をとめる直前に醤油で味をととのえます。冷えるあいだに味が染みこみます。

『 精進百選 』には、砂糖の灰汁を卵の白身でとると書かれていますが、とてもそこまでは。

馬鈴薯のきんぴら

きんぴらとは、ゴボウとニンジンだけの料理ではありません。

芋を洗い、芽があれば芽をとっておきましょう。芋を1cmほどの角切り、長さは4~5cmほどに切ります。ゴマ油をフライパンにいれ温め、切った芋をいれ中火で炒めます。白い芋が、うすく透明になってくるでしょう。砂糖と醤油をいれ甘辛く味付けしましょう。

砂糖と醤油をいれると焦げつきやすくなります。よく混ぜながら煮つめましょう。

みたらし団子にかけるような、甘い砂糖と醤油の焦げたどっぷりとした香り。芋は自然の団子になっています。さっくりとした表面、中心は芋のほっくり感がありました。

お子様や甘党のかたにウケがよい料理です。

蓮根のうま煮

蓮根は煮くずれしにい食材。料理初心者にぴったりの食材とも言えます。泥まみれの蓮根はあまり見ません。しっかりと洗浄されている蓮根は、喰うマネをするモノにはうれしいものです。

さて、水上勉は、蓮根の皮をむきます。私は蓮根の皮はそのままに煮ます。

昆布だしに砂糖、みりん、日本酒をくわえ、中火にかけ蓮根をいれ煮こみましょう。蓮根がどっぷりと浸かる出汁を用意する必要はありません。蓮根の半分ほど浸かればよいでしょう。途中でひっくり返すテマはかかりますが少量のだしと調味料で調理できます。

蓮根をお好みのかたさまで煮つめます、そして、醤油で味をととのえれば出来上がりです。

食べたときに、ガリッと音が聴こえる蓮根が好きです。お好みのかたさを見つけてください。蓮根の穴の部分には、しっかりと味が染みております。ガリッとした音、これもうま煮の要素のひとつだと思っています。あなたは、どう思いますか。

唐辛子の甘辛煮

唐辛子の甘辛煮は7月と10月に登場する料理です。『 土を喰う日々 』の写真では、辛煮と書かれていました。

醤油と砂糖、ミリンで唐辛子を煮た料理です。唐辛子は赤くタカの爪と呼ばれている乾燥した唐辛子を調理するよりは、生で売られている唐辛子を煮るとよいでしょう。生の唐辛子であれば、キャンと吼えるほど辛い料理になりません。たまに、大当たり的にド辛い唐辛子はありますが、それはそれで。

自分で唐辛子を育てている人や、枝つきで売られている唐辛子を手にいれられたかたは、葉もいっしょに煮こめます。

唐辛子がくたりとし、青色が黒く染まるまで煮ます。唐辛子の辛さは感じられました。ほどよい辛さではあります。醤油と砂糖、ミリンに負けない太陽を浴びた唐辛子の活き活きとした風味を堪能できます。

この辛さは、白米を何杯でもいけると書かれていました。白米もいいいものですが、お酒にもよいものです。保存容器にいれ冷蔵庫にいれておけば長いあいだ保存できます。唐辛子と醤油の精妙な味をたのしめます。

水菜と油揚げ

材料の甘味をひきだし、ごたついた味つけにしない、と書かれています。

これが、なかなかにむずかしいのです。味付けもなにも書かれていません。

昆布出汁か椎茸の出汁に塩か少々の醤油をいれコトコトと煮つめます。また、水菜はパリッとした食感を残すために最後にくわえてもよいです。

しっぽりと油揚げが甘く感じられ、出汁がやわく染みでてきます。水菜は見たがみずみずしいだけでなく、しゃくりと清くすずしい食感です。

水菜と油揚げとお財布にやさしい食材をつかう料理です。あなたが、材料の甘味をひきだし、ごたついた味つけでない、と思う唯一の味を探求しましょう。日々精進。

生麩の煮しめ

生麩を昆布だしと醤油、日本酒で煮しめました。

生麩の口にくっつくでもなく、離れるでもなく楚々とした食感。煮しめる味によって風味を変化させる掴みどころのない生麩。

生麩は懐石料理によく登場します。日本人の味覚によりそってきた生麩。

生麩には、味はないです。フカヒレやツバメの巣などの高級食材とおなじですね。つまり、生麩も高級食材といえるのかもしれません。

その高級食材の生麩の作り方も書かれています。

強力粉などを水で洗えば作れるのですが、溶けた粉がもったいないと思いました。

そこで、生麩の材料であるグルテン。そのものをねり生麩を作っています。

かっちりとした生麩は、お肉のかわりになります。

チャーシュのかわりにもなるんです、自作した生麩は。

また、ゴマやよもぎをねりこんだ生麩も作れます。

しっかりとよもぎをお湯で発色させていないと、カビがはえたような色の生麩になります。

なにごとも手を抜いてはいけません。精進あるのみです。

高野豆腐

高野豆腐を説明書に書かれているとおりに戻しましょう。さいきんは戻す必要がなくそのまま煮こむことができる高野豆腐がおおいです。気楽に高野豆腐料理に挑戦できます。

干しシイタケで出汁をとり、醤油と日本酒、酒で味をととのえ、戻した高野豆腐コトコトと煮こみましょう。落としブタを落とすと出汁のまわりがよいです。高野豆腐の芯にしっかりと味を染みこませます。

青いものを飾ると彩もよいと書かれていました。また、出汁をとった干しシイタケといっしょに盛りつけてやると重厚感を感じさせる一品になります。

温かい高野豆腐も冷たい高野豆腐、どちらも好ましいものです。

イギリスの作家さんが、乾いた高野豆腐を見て「カス」だと言ったと書かれています。乾物をもどす習慣がイギリスにはないのでしょうか。

隠元豆のつくだ煮

隠元をお好みの長さに切ったのちフライパンでゴマ油で炒めます。日本酒とミリン、醤油をいれ炒めた隠元を煮つめます。ショウガをいっしょに煮つめました。水上勉のレシピには、ショウガはいれられていません。

隠元がくたりとしながらも崩れることなく長いままです。濃い味つけだからこそ、しんなりとした隠元のなかに緑の芯のような味と風味を感じられます。隠元のちいさい、ちいさい豆がコツンと歯にあたるのも悦です。

調味料の割合は、醤油2:ミリン1:日本酒1です。お好みの割合をみつけてください。ショウガでなく唐辛子や山椒をいれるのもたのしいでしょう。

雑煮

白味噌の甘さが、白餅を清潔にやわらかくしていて、その甘さはとてもいい。

引用元:土を喰う日々

昆布のだし汁に皮をむいた大きめの里芋をいれます。そして、白味噌をくわえコトコトと煮こみましょう。

里芋と白味噌が混ざりあい、トロッとしたころに白餅をいれ、白餅の角がとれトロンとしてきたら器に盛りつけます。

清潔な甘さ、自然の甘味とでもいうのでしょうか。里芋が白味噌を滋味ある甘さにしたてあげ、里芋がとけこみ味の奥の太道のようなコクになり、その甘いお汁で煮こんだ餅は溶けトロみになり、お上品なポタージュといったお雑煮。とてもよいものです。

花豆のふくめ煮

おおきい花豆を一晩中水につけておき、水をいれかえコトコトと似ます。柔らかくなったのを確認し砂糖をいれつつ甘味を調整しましょう。お好みで塩と醤油で味をととのえます。

土を喰うマネをするものは、保温調理器をつかいました。

豆をあまく煮たものはすかん、と思っていました、この花豆のふくめ煮を食べるまでは。

ふっくらとした物腰のやわらかい柔和なお豆。花豆のふくめ煮を口にふくむと、しっとりとした汁気のある栗きんとんのような食感。噛むと花豆は、ほわりとやわく崩れます。

なんの飾り気もないぽってりとした豆です。あふれだす甘味は、自然の甘さの極致とでもいいましょうか。舌にこびず、おごらず、こびりつかず、とけるように淡い甘さです。舌が疲れることなく豪華絢爛な天然な甘さを堪能できます。

ウイスキーやブランデーのあてになると書かれています。いまふうに言うのであれば、あてになりすぎるほど、あてになる花豆のふくめ煮です。ブランデーやウイスキーで花豆を食べる幸せといったら、なにものにもかえがたい多福です。

黒豆

おなじように黒豆も作れます。

花豆を食べたあとでは。

極上の黒豆をつかえば、高貴な味になるのかもしれません。

揚げもの

たらの芽の天ぷら

水上勉は書く、たらの芽の天ぷらは天ぷらの王者だと。年をとらなければ、わからない言葉もあるのだなと思いました。若いころの水上勉も父が山菜をむしって食べた姿をよいものと思わなったそうです。小さいころは大人が、なぜあれほど山菜をありがたく思うのかわかりませんでした。

年をとった今しみじみと山菜のよさがわかります。天ぷらの王者といわれたのであれば、王者の風格はある天ぷらであると答えたいです。

衣にすこし砂糖をいれるのが水上勉流。あまり甘くしすぎるとたらの芽のほの苦さが、わやになります。ほんの少々の砂糖で十分でしょう。ぜんざいに塩の反対をおこなうわけです。

パリッとした衣のなかから、ほっくりと柔らかく、さっくりと裂けるたらの芽。裂けた芽からは、酸いも甘いも知り尽くしたいぶし銀な苦味がほろり。

スーパーで手にとるたらの芽の値段さえ安ければ、春のうちは毎日でも揚げ食べたいです。

精進揚げ

精進揚げと格式高い名前ですが、天ぷらです。

冷蔵庫にたまってきた野菜やら、育ちすぎた野菜、道ばたに生えている山菜を揚げる精進料理。

どうぞ、精進揚げですと提供すると、天ぷらではと返事があるでしょう。そこで、ひとつ、精進料理とは、なんぞやの知識を水上勉から学び、滔々とのべるのです。ほう、そういうものか、それは格調たかいとお客さまが納得されるか、どうかは、あなたしだいでございます。

蛇腹昆布

乾燥している昆布を食べやすい大きさにハサミで切りましょう。そして油で揚げるのです。油の温度は低めでじっくり揚げるとパリッとした食感になるように思います。

昆布を揚げすぎると苦くなると書かれています。しかし、苦くなった昆布にはあたっていません。

海苔とちがい、昆布は素揚げしたほうが食感が強くおもしろいです。パリッとしており、食べると油と混ざりあった味の素の素の旨味がお口いっぱいに広がります。

ビールや酎ハイにもあい、またお子様にも喜ばれる一品です。揚げ物をするときに、ソッと昆布を揚げるようになりました。

ひりゅうず

水気をきった豆腐をすり鉢でする。豆腐のなかには、ニンジンやゴボウ、キクラゲ、えだ豆をいれました。銀杏やくわい、焼き栗があると御馳走と書かれています。豆腐のなかにいれる具材を炒めましょう。

豆腐と炒めた食材を混ぜあわせます。水上勉は、くず粉をいれて生地をまとめています。くず粉は高くて、とてもとても。片栗粉で混ぜあわせました。

丸くした生地を油であげ、焦げめをつけます。しっかりと粉と混ぜあわせておかないとバラけてしまいますゾ。

自家製ひりゅうずは、なかの具材の風味が強く、食感もパリパリと心地よいです。お椀にいれ出汁をかけてもよし、おでんにいれるのもよいでしょう。

霰(あられ)豆腐

豆腐の水をきり、サイコロ状にきり油で揚げました。水上勉は、ザルなどで豆腐の角を削ると書いています。めんど、いや、豆腐の角がもったいないのでそのまま揚げました。

ちいさい揚げ豆腐をあつあつの状態で提供する、それが霰豆腐には重要だと思います。

はふはふと舌と唇よ燃えよといった温度。豆腐の内側は鍾乳洞のようにひんやりしています。熱と涼のふたつをサイコロのなかであじわえます。

また冷めても表面はパリッとしており作り置きにもぴったりの料理です。弁当にいれておくと、サイコロが転がっているようで可愛いです。

こんにゃくの煎りだし

こんにゃくをゆでておく必要がない料理。パパッと1品を作れるが、猛烈に熱い油がはねる料理でもあります。

こんにゃくをなるだけ薄くきりましょう。和食の調理人は、刺身のかわりに、こんにゃくにて包丁つかいを学ぶと聞きます。薄くきる技術の特訓にもなります。

熱したフライパンにごま油をいれ、こんにゃく煎りつけましょう。ちいさい熱い油に気をつけながら、両面にこんがりと焼きめをつけるのが重要。焼きめをつけることで臭みがなくなり、こんにゃくの香りが芳ばしいものになるのです。

仕上げに醤油をまわしいれます。醤油が蒸発し、よい香りがつけば出来上がり。しょうがなどを添えてめしあげるように書かれています。

こんにゃくをしっかり焼く、これだけで、こんにゃくの臭みが消え、食感もこんにゃくらしからぬ、精悍な噛みごたえ、神妙な風味になります。

こんにゃくの衣かつぎ

こんにゃくを薄くきります。そして、こんにゃくに中力粉を水で溶いたものをかけたのち、油で揚げた料理です。

パリッとした衣の食感。水分がぬけしっかりとした噛み応えのあるこんにゃくの食感の対比がおもしろい一品。食べごたえもありお腹がふくれる料理です。

こんにゃくの香りは、油で揚げると気になりません。

こんにゃくの衣かつぎを出汁で煮たのち白米にのせ、トンカツソースをふりかけました。

目を閉じて食べると、トンカツのように。

小鳥もどき

こんにゃくをゆでアクをぬき、うすい油をひいたフレイパンで揚げます。

水分の塊といったこんにゃくです。油にいれた瞬間は地獄のカマがひらいたようなテンヤワンヤの熱い汁が飛びちるので御注意。

こんにゃくを揚げることで、こんにゃくが軽くなり、さっくりとし、臭みも消え、小鳥の肉(食べたことはない)のように軽い食感になります、まことに面白い料理です。

小鳥もどきを醤油などでカリッと焼きあげ、柚子などのを飾りつけてやりました。これまた妙味。

こんにゃくの山椒焼き

こんにゃくをゆで冷ましたのちに、こってりと焼きつける調理方法です。しかし、ゆでずにそのまま焼いています。

味噌や醤油、砂糖、日本酒などを混ぜたタレを作っておきましょう。

うすく切ったこんにゃくをフライパンで焼き焦げめをつける、タレにくぐらせ、もう1度焼く、もう1度タレにくぐらせる、この作業を繰りかえすことで、こんにゃくに味が染みこみ、さらに旨味の層ができるのです。

盛りつけ山椒をふりかけましょう。こんにゃくを何度も焼くのは、メンドクサイものです。しかし、そのメンドクサイ精進をする価値ある味でございます。

日本酒やビールのあてにもなり、また白米も食べられます。お弁当にもよいでしょう。

これが、こんにゃくなのかと括目させれることうけあい。

こんにゃくの辛揚げ

揚げと書かれていますが、薄くひいた油で焼くように揚げます。

こんにゃくを短冊状に切り、中央に切れめをいれくるりと回します。切れめをいれすぎると、ハシっこのようにくるりと回りません、精進不足なり。

フライパンにごま油を薄くいれ、こんにゃくをいれ弱火で炒めましょう。細かい熱い飛沫が飛びます、ご注意を。ここに調味料をくわえ、こってりと煎りつけます。醤油と日本酒、ミリンと2:1:1の割合を基本に味見しながら煎りつけてください。辛味の七味をふりかけつつ、煎りつけます。

こってりと旨みの層をまとったら器に盛りつけましょう。

どっしりとした腰のつよい風味と味があり、ピリッとした辛味。酒飲みから、辛党、ご飯党にまで愛される一品。

胡瓜(きゅうり)の辛揚げ

辛揚げの辛は、誤字脱字ではございません。揚げと書かれていますが、炒めものにちかい一品です。

きゅうりと唐辛子、調味料さえあれば、5分ほどで酒、とくにシュワシュワと泡をたてている飲み物との相性のよい一品を作れます。

ごま油にニンニクと唐辛子をいれ弱火で香りをたてておきましょう。きゅうりは包丁で短冊に切るのもよいです。味が染みやすいように麺ぼうにて叩きわりました。

香りがたったフライパンにきゅうりをいれます。火力は中火から弱火がよいでしょう。油がはねます、ご注意くださいね。

焼いているときゅうりから水分が染みでてきます。油と混ざりながら水分は飛んでいきます。煮つめましょう。いつまで煮つめるのかというと、微妙な味になるのを待つ、と書かれています。

なので、微妙な味になるのを待ち器に盛りつけてください。

火をつかうのが嫌な人は、きゅうりを叩きわり、ゴマ油と唐辛子、ニンニク、お酢などと混ぜあわせておけば泡がたつお酒にあう一品ができます。

加茂茄子の田楽

茄子を夏の王者という水上勉。そのなかでも加茂茄子のレシピを見たらよだれがでるとも書いています。

まるくころんとした加茂茄子の姿を関西に住む私はよく見かけます。加茂茄子の果肉は、しっかりとひきしまっており余計な水分がないように感じるのです。

その加茂茄子を丸く切ります。そして、切った面に包丁にて格子状の切り目をいれ、うどん粉をふりかけ油であげました。

お好みの味噌を日本酒やミリンなどでねりあげ、加茂茄子にぬりつけましょう。食べる直前に白ごまをふりかけいただきます。

格子状に切られた加茂茄子の果肉に油が染みこみ、味噌も染みこんでいます。柔らかい味噌と揚げられた加茂茄子の果肉は、ふわりと歯茎でも食べらえる柔らかさです。そして、こつんとあたる白いゴマの衝撃が粋です。

果肉のひきしまった加茂茄子は、油と味噌におぼれていない透明な旨味の芯をもっています。

揚げだし茄子

茄子を切り揚げる。茄子の果肉にもよりますが、スポンジのような茄子は油をよく吸いこみトロけるような食感になります。

茄子を噛むと茄子のお汁と油が混ざりあった潤としたスープが染みでてくるでしょう。夏の醍醐味といった味です。

昆布や干しシイタケでとった冷たい出汁に、揚げたての茄子を漬けこみ冷蔵庫で冷やしておきます。

夕方といえどもむっと蒸し暑い夕方。出汁が染みこんだキンキンに冷えた揚げだし茄子をパクリ。茄子から飛びでるお汁がお口に浸透するでしょう。お口の中が涼。

すこしカツオ節も出汁にくわえると風味が濃くなります。精進料理ではありませんが、そこは、ほら土を喰うマネですからね。

揚げだし大根

大根をちいさく切ります。

大根に衣をつけ、油で揚げるだけです。大根に串をさし、すーっと串がはいっていけば出来上がり。大根を蒸すか、ゆでておくと揚げ時間を短縮できますよ。

七味や黒胡椒をかければ、味の層があつくなり、大根おろしをまぶせば、風味が軽くなると『 精進百選 』には書かれています。お好みのものをかけるか、まぶしてください。

黄檗風(おうばくふう)てんぷら大根

大根を味噌で煮たのち油で揚げる手のこんだ料理です。黄檗風とは、禅宗の一派のひとつ。

水上勉をして、味が厚いと言わせた料理です。

パリッとした衣のしたに、味噌が染みこんだ柔らかい大根あり。ほろりと崩れたところから、日本の叡智のかたまり味噌の風味。

小籠包のように、衣のしたから、大根と味噌を煮こんだ熟成された濃い風味のなかに、ひとすじの透明な清涼感がある旨味の泉がふきあがります。

味噌の風味や味噌汁の味つけのちがいから味は千差万別。

喰うマネをするものは保温調理で大根を煮こみます。

ズッキーニのてんぷら

いまの世でもズッキーニを食べたことない老人はおおいのではないでしょうか。水上勉は出まわりはじめたズッキーニを料理していました。

とりあえず、油で揚げれば野菜は食べられると思います。ズッキーニのてんぷらは、ほっくりとしており、栗とカボチャの中間ぐらいの食感でしょうか。なすびのような形ですが、しっかりとした噛みごたえもあります。

ズッキーニの甘さは控えめ、ちくりとくる山菜のような苦味があります。山菜を思いださせてくれる苦味が乙です。

ズッキーニのてんぷらお試しいただきたいお味でございます。

衣がけ芋

ほどよい大きさにじゃがいもを切ります。中力粉を水でとき、すこし醤油をいれた衣を作りましょう。

衣がけ芋と書かれています。端的に言うならば、じゃがいもの天ぷらです。じゃがいもに衣をまとまわせたように見えるので、衣がけとよばれているのでしょうか、謎のままです。かなり読みこみましたが、衣がけの謎は書かれていないと思います。

ほっくりとやさしいお味の精進料理。

おろし揚げの煮ふくめ

芋の芽をとり、おろし金などですりおろします。すりおろした芋に塩と芋の重量の1/4の中力粉をくわえこねます。かためにしあげると、油で揚げているときにくずれません。

大さじ1ほどの大きさの団子にまとめます。そして、油で揚げます。あとでだし汁で煮るので、表面がおいしそうな狐色になれば油から団子をあげます。

だし汁(昆布だしに醤油と砂糖)を火にかけ沸騰してきたら、芋の団子をいれます。そして、弱火でコトコトとにます。

芋とは思えません、この料理は。手がかかっています、手をかける価値はあります。イモっぽさなどなく、揚げられたかんばしい香り、ほっこりとしており滋味ある芋。その芋をはんなりとしたお出汁といっしょにいただきます。

焼かずに揚げた明石焼きにちかいものを感じました。

煎餅(せんべい)芋

じゃがいもをうすく切り、陽にあて干す。遠火で焼くか油で揚げる料理です。

そう、老若男女が大好きなポテトチップスですね。

ほろりと崩れるほど軽い食感。そして、じゃがいものこうばしい香りが心地よいポテトチップスです。

市販のポテトチップスの量が少ないと嘆く日々は終わりました。ポテトチップスはお家で干してから大量に作るものになりました。

湯葉の素揚げ平椀

鍋のうえにできる湯葉を揚げるという珍しい料理です。

湯葉料理は、豆乳を火にかけて作るよりも、生湯葉を店で買うか、乾燥湯葉を使ったほうが作りやすいです。

生湯葉をしっかりと折りたたむ、空気がはいらないようにたたむのが重要と書かれています。空気がはいりこんでしまうと、湯葉がプクッとふくらんでしまいます、いやさ、ふくらみました。湯葉をたたむ専用の調理器具があるそうですが、そこまでする必要はないでしょう。

片栗粉やくず粉でいれトロミをつけた出汁をカリッと揚げた湯葉にかけましょう。柚子を飾れば、しみじみとした禅味の御馳走といった椀です。

柚子の高貴な爽やかな香りが、白い湯気にのり鼻をくすぐります。トロッとした出汁、パリッとした外側、たたみ断層になっている湯葉の重なった食感。食感の対比が精妙です。

この料理を先付けなどでだされたのであれば、背骨がピンッと自然にのびてしまう、それぐらいお上品なお椀。

湯葉の海苔巻き

ひらたくのばした湯葉に、2枚にかさねた海苔をくるくると巻き素揚げにする料理。

湯葉が破れてしまっても、堅牢な海苔のおかげで巻けるんです。湯葉と海苔のウズマキが、目をたのしませてくれます。

かるいスナックのようにパリッと食べられます。しかし、味と香りはかるくないです。海苔のこうばしい香り、揚げた豆の強い風味を堪能できます。湯葉と海苔の旨味と香りの螺旋を口のなかに描きだすのです。

トロミをつけた出汁をかけ、柚子をのせお椀にすると書かれています。

ですが、パリッとした食感をそのまま口に放りこみ、ビールや酎ハイとたのしむのを好むのであります。

守破離。はじめは作り方を守り、つぎに作り方を破り、師匠から離れる、そのような立派な気持ちではありません。ただただ、酒飲みとしては、パリッとした食感を愛するのです。

湯葉のもやし巻き

もやしを湯葉でまき揚げた一品。お手頃価格のもやしを湯葉でまき揚げると、ちょっとした御馳走になります。これまた先人たちの精進のおかげでしょう。

もやしをサッとゆでるか炒めてからまくとよいと書かれています。ですが、もやしに塩をふりかけ汗をかかせたのち湯葉でまき揚げました。匂いが気になるもやしは、ゆでたり炒めたりするとよいでしょう。

湯葉のパリッとした食感の芯にもやしのシャックリとした食感。そして、もやしから淡い水分が染みでてきます。

海苔や卵でも代用できるでしょうが、湯葉の軽さと風味が、頭ひとつ抜けている気がしますね。湯葉ともやしをあわせた先人の精進に感謝を捧げたくなる一品。

万願寺ピーマンの唐揚げ

関西では、万願寺唐辛子として売られている野菜です。京野菜にはいるのでしょうか、くわしくは知りません。

ピーマンよりも柔らかく、そして、みずみずしい甘さがあり、焼くと甘さがまし、緑の皮がしっとりと柔和なものになります。

たまに、キャンッと辛い万願寺唐辛子にあたりますが、ほとんどの万願寺唐辛子は辛くありません。

万願寺唐辛子に針で穴をあけ、うどん粉をふり、百八十度の油で揚げます。

揚げたては柔らかくしなやかな万願寺唐辛子の食感が残っており、清涼な甘さを堪能できます。

揚げた万願寺唐辛子を食べずに置いておくと、穴から空気がぬけるように皮が薄くなり、皮も柔らかく媚びるように舌にのるようになりました。甘味もまします。

爽快な甘さのある万願寺唐辛子です。塩だけでも食べられる妙味があります。

蒸しもの

胡桃(くるみ)豆腐

たっぷりの胡桃をすり鉢ですります。ふわりとした粒子が心地よく、すりつづけていくと、ねっとりとしたものに変化します。すった胡桃は、それだけで十分に御馳走といったお上品なお味です。日本酒をふりいれ胡桃をのばしておきます。

水を切った豆腐をくわえ、ざっくりと手で混ぜあわせます。醤油で味をつけ器にいれ7分ほど蒸しましょう。

わさびと醤油をよく混ぜあわせ蒸しあげた胡桃豆腐にのせます。

しっかりとすった胡桃の高貴な香気。森の小動物の栄養をまかなう脂質。ねっとりとした濃い風味、そこに淡泊な白い豆腐をあわせることで、心地よい軽い口当たりの食感になっています。

とっておきのお客様にだす精進料理だと書かれています。なるほど納得のお味でございます。

これを提供されたあなたは、とっておきのお客様とみなされいるのでしょう。

利休豆腐

たっぷりの胡麻をすりおろし、日本酒でのばします。たっぷりの胡麻をつかう、これがこの料理の味のキメテ。

水気を切った豆腐を手で混ぜあわます。ラップにくるみ弱火で蒸しあげます。ラップが登場するのは珍しいと思いました。いろいろな容器にいれ形よく蒸しあげ形をたのしむ、客にあわせて形を考えるとよい書かれています。

胡麻のイキのよい香りがあり、豆腐のおかげでほっくりとした胡麻感を堪能できます。口のなかで小さい胡麻が集まり「わぁ~」と濃い旨味の波に。わさびと醤油をお好みでつけましょう。

馳走のきわみ、と書かれし利休豆腐。

利休といえば黒茶器が有名だと思います。利休好みといえば黒。

黒胡麻でも作れます。お客様にあわせて提供しましょう。

形が崩れることもあるでしょう。それもまた精進です。

ゴマ油をまぶしたソーメンに崩れた利休豆腐をのせる、黒い旨味におおわれた白いソーメン。夏バテ知らずになるかもしれない麺料理でございます。

蒸し茄子

茄子は、夏の畑の王者である。

引用元:精進百選

なすびの苗を1~2本ほど地植えすれば、初夏から晩秋まで紫いろのお水たっぷりの茄子を収穫できます。

剪定(せんてい)などの手間をすくなく、のびていく枝に添え木をし、たまに肥料をまくだけ、虫もつきにくいのでモノグサな人間でも育てやすいです。おおきく形のととのったなすびを作るのはたいへんですが。

しかし、形がわるくとも、収穫したての紫の水風船といったなすびの果肉は、収穫した人間でなければ、あじわえない茄子の醍醐味です。

収穫したてのなすびのヘタを切りおとし、蒸し器にいれ串がすーと抵抗なく刺さるまで蒸しあげる、そして冷まします。お好みでショウガをのせましょう。

これだけで涼を感じ、なすびのやわらかい果肉から、太陽をあびた元気な風味、清水のような茄子の水分と旨味が口に染みでる御馳走になるのです。

茶碗蒸し

卵でつくる茶碗蒸し。卵をつかっては精進料理にはなりません。そこで、豆乳を卵のかわりに使います。

卵をといたり、こしたりする必要がありません、豆乳で茶碗蒸しをつくると。

こってりとした卵の風味はありませんが、熱々を食べるのであれば豆乳でも十分でございます。

山かけ蒸し

長芋をすりおろし、すり鉢でだしと混ぜあわせ器に流しこみます。器のなかに茶碗蒸しにいれる食材をいれてください。

豆乳や卵のかわりに長芋をつかい蒸しあげるレシピです。

ほっこりとし、なめらかな長芋の風味が茶碗につまっています。空気をふくんだように軽い食感は、舌のうえで熱だけを残し淡雪のように消えます。

長芋のすりおろしなども寒い日にはよいものです。温かさということであれば、山かけ蒸しが長芋一本分ほど勝っております。

つと豆腐

豆腐と食材を布巾やキッチンペーパーでくるみワラをかけ蒸しあげる料理つと豆腐です。

納豆のワラを使うとよいと書かれています。しかし、ワラで包まれた納豆など見かけません。そこで水上勉とおなじように畑で使うワラを使い蒸しあげました。

ワラで蒸すなど変な香りがするのでは思われたかはいらっしゃるでしょう、私もそうでした。

まったく、ちっとも、変な香りはしません。むしろ、こうばしい香りです。どのような香りかと言われると嫌味がなく上品な香り。

夏の残照といった太陽光をたっぷりと浴びたワラをつるし干している懐かしい古き日本の牧歌的風景を思い浮かべる香り。田舎は遠くになりにけり。

つと芋

生のじゃがいも(芽はしっかりととっておく)をすりおろし、うどん粉と混ぜあわせておきます。

耳たぶほどのかたさになるようにうどん粉をくわえてください。すこし塩をいれるとこねやすくなります。

棒状にしたものを蒸しあげます。太さにもよりますが、蒸し時間は中火で10分~20分ほどでしょうか。蒸しあげたものを冷ましたのち巻きすで形をととのえるとよいと書かれています。

じゃがいものデンプン質とうどん粉のグルテンがむすびつきお餅のようにむっちりとした食感です。

大根おろしをかけるのを好みます。

お腹がふくれやすい料理のように感じました。

味噌蒸し豆腐

水気をきった豆腐を熱につよい器にいれます。味噌は醤油や砂糖、日本酒でのばしましょう。柚子も味噌にくわえるのが、この料理のミソ。

なんだ、豆腐と味噌を蒸しただけか、と思われるでしょう。しかし、柚子の香りがくわわることで、扇子をパッとひらげたような雅な風味になるのです。柚子は皮だけを味噌にねりこむと書かれています。白いボワボワの部分をねりこむと苦くなるからです。わたしは白い部分をすこしいれ苦味をきかせるのを好みます。

豆腐は昆布とお湯でゆでるのがセオリーだと思っていました。しかし、豆腐的コペルニクス大転回がおこった一品。

蒸した豆腐は、水っぽくなく豆の甘味や滋味を地球のマグマのように内にためこむのです。水を含んだスポンジを押すと水がでるように、豆腐を噛むと、豆腐そのものの旨味が染みでてきます。

そこにクレソンの緑の香り、黄色い柚子の香り、ひとつの器のなかで白、緑、黄色が揺れうごきました。

五目豆腐

豆腐の水をきり、すり鉢ですりおろします。水上勉は、水をきったあと蒸しあげすりおろしています。

豆腐にうすく味をつけ、お好みの食材をいれましょう。5ついじょうの食材をいれると味がにぎやかになります。青い豆などをいれると彩が、はなやかなものになるでしょう。

ゴマ油をぬった容器にすりおろし食材とまぜた豆腐をつめます。蒸し器にいれ中火で10分~20分ほど蒸しあげます。豆腐がしっかりとかたまるまで蒸しましょう。

プリンのように豆腐を器にいれます。とろみをつけただし汁を用意しておき、豆腐のうえにかけいれましょう。

白い湯気がほっこりとたちあがっています。しっとりとした柔肌の豆腐には、トロミがつき温泉上がりの肌のようにつるり。ほんのりとゴマ油の香りも感じられます。

あつあつ、ほふほふの豆腐から様々な食材が飛びだし眼と口、舌をたのしませてくれます。人の心を優しくホグしてくれる柔和で安心できるお味です。

椎茸豆腐

椎茸をすり鉢でこまかくし、つぶした豆腐と混ぜ蒸してかためる料理。椎茸と豆腐だけで、かたまるのかと不安でした。固まりました。

顔ぜんたいに、椎茸の香りを濃く感じられる椎茸好きにはたまらない料理。やわらかい豆腐のような食感の椎茸といった味です。

椎茸の香りをつよくだしたい人は、椎茸を焼くとよいと書かれています。また出汁をとった椎茸でも作れます。出汁をとった椎茸の香り、きっちりと最後までしぼりだせるのです。

蒸し白菜

白菜のロールキャベツと思ってもらえば間違いない精進料理。白菜のやわらかい先端にて、具材を巻き蒸します。

なかに巻きこむ具材は豆腐を炒め、ほかの具材と混ぜあわせましょう。白菜の白くかたい部分や椎茸、ニンジン、タケノコがあれば上々。白菜の葉で具材をくるりと巻く作業は、ロールキャベツほどしっかりと巻く必要はなく気楽です。具材を巻いた白菜を器にいれ蒸します。

蒸しているあいだに、昆布だしを葛でとかしあんかけを作ります。わたしは片栗粉でとろみをつけ、醤油と砂糖で味をつけたあんを器にいれ蒸しあげました。

ぬくぬくをそのまま召しあがれ、なかから何が飛びでるのか、子供ならずともワクワクさせられる精進料理。

また、白菜は漬物をつかうと濃い風味になります。そして、中華風の具材、たとえばキクラゲや豚肉、エビなどをいれると中華風の点心のような味になるのです。巻くのが楽、それでいて見栄えがよく、うまい精進料理、わたしの得意料理のひとつにおさまりました。

隠元豆(さんど豆)の蒸しあげ

隠元豆のすじをとり、蒸すだけのなんとも単純な料理です。

できるだけ新鮮で緑が活き活きとしている隠元豆をつかうとよいです。

隠元豆の緑の太陽のような陽気な風味と黄色い太陽のようなピリッとした辛味のショウガの対比がたのしい一品です。

電子レンジでも作れます。チューブのショウガなどあれば、3分以内に作れるでしょう。

しめじ丼

どんぶりにご飯をいれ蒸します。炊き立てでも冷えたご飯でもかまいません。

ご飯がぬくもれば、しめじを洗い手頃な大きさに手でさきます。さいたしめじをどんぶりにいれ蒸しあげましょう。

蒸し器の蒸気は逃がさずに適度にどんぶりに落ちるようにしています。しめじが柔らかくなり、針葉樹の腐葉土のようなしめじの香りがしてきたら醤油をどんぶりにまわしいれ、しめじとご飯を混ぜあわせましょう。

しめじの香りと醤油の香りが混ざりあい、日本家屋の影のような強く厚い香りになります。はふはふとあつあつのご飯を食べる、ご飯ひとつひとつにしめじの奥ゆかしい味が染みわたっています。

いつでも極上のご飯を食べられるのです、蒸し器さえあれば。

蒸しうどん

写真を見ても、うどんはどこじゃ、となられたことでしょう。うどんは食材の下にあります。

どんぶりにうどんをいれましょう。ふというどんをスーパーで買うように書かれています。

うどんは自家製です。喰うマネをするモノのくせにうどんは手作り。

干しシイタケと昆布で出汁をとり、干しシイタケと油揚げを細く切り出汁に醤油と日本酒、みりんをいれ甘辛く煮ます。干しシイタケと油揚げ、出汁をうどんのうえにかけます。

油で揚げたゴボウやレンコンものせましょう。

青ネギをいれ、くずでとろみをつけたあんもかけまわします。

どんぶりがいれられる蒸し器にいれます。強火で20分ほど蒸しましょう。

寒い冬はこれに限る。七味唐辛子もなくてはならぬ薬味。寒い村まで客はおいでるのである。芯からぬくめてあげたい。馳走にかける走るとはこういう心である。

引用元:精進百選

和えもの

大根とにんじんの酢味噌

大根とにんじんをお好みの形に切りましょう。塩をふりかけ、しんなりするまで放置します。

白味噌と和がらし、酢を混ぜ味を確認。しんなりした大根とにんじんと混ぜあわせましょう。

短冊に切り、たてかけるように盛りつけると書かれています。たてかけかたは、あっているのでしょうか。

砂糖をいれ味に厚みをくわえるのが水上勉の好み。白味噌とお酢を混ぜると、和風マヨネーズといった装いになります。大根とにんじんの表面はぬれ柔らかく、芯はややパリッとしており新鮮さを感じられます。サラダのようでもあり、お酒のアテにもなる一品。

水上勉の修行時代、発売されたばかりのマヨネーズを大根とにんじんの酢味噌にいれたそうです。お師匠さまが、たいそう気にめしたと書かれていました。禅僧まっしぐらマヨネーズ、ただし、精進料理にはなりませんゾ。

切干し大根の白酢和え

水上勉流の切干し大根は、ほそい切干し大根ではなく、ふとい切干し大根のように書かれています。

ほそい切干し大根で白酢和えを作りました。水上勉の作り方ではありません。

切干し大根を水に浸けます。たっぷりの水に浸ける必要はありません。切干し大根がひたひたに浸かる量でかまいません。切干し大根からも出汁がでるのです。その出汁で煮ます。たっぷりの水に浸けてしまうと切干し大根の出汁が散逸してしまうのです。昆布といっしょに浸けておけば、さらによい出汁がとれます。

切干し大根がよい塩梅にもどれば、醤油と砂糖でうすく味をつけ弱火で水分がなくなるまで煮ます。常温になるまで冷まし冷蔵庫にいれておきましょう。

白酢を作ります。白ゴマの油がにじむまですり鉢ですり、水を切った豆腐もくわえすります。しっかりとすった豆腐と白ゴマに酢と塩、砂糖で味つけをします。

なめてみると、ビックリ。これは、マヨネーズではござりませぬか。精進マヨネーズです。

作るまえは、メンドクサイと思っていました。作りおきしておけば、いろいろなサラダに使えます。おそらくマヨネーズよりも低カロリーでしょう。

しゃっくりとした切干し大根の食感、切干し大根の素朴な旨味、まぶされた精進マヨネーズ。まるでマヨネーズをいれたコクのある和風サラダです。

にんじんの白和え

紅白の色が鮮やかであり、人の眼をひきつける一品。

細く切ったにんじんをゆで、日本酒で煮る、そして冷まします。豆腐の水を切っておいたものに塩と砂糖、味噌で味をつけましょう。

にんじんの味を確認してから豆腐に味をつけるほうがよいです。ゆでたにんじんは、甘かったり、味がなかったり千差万別。豆腐の味を調整する精進があります。ふたつを和え器に盛りつけましょう。

ほろりと崩れる豆腐といっしょに崩れるにんじん。やわく、はんなりとした優しい純朴な甘さがあります。

紅白なます

大根とにんじんを細く切りそろえます。そして、塩をパラパラとふりかけ大根とにんじんを泣かせましょう。

水分をしぼり、少々のお酢であえました。いろいろと試しましたが、この方法がもっとも大根とにんじんの風味を壊すことなく自然にちかい風味のまま食べられます。そして、作るのにテマヒマがかかりません。

りんご酢や黒酢なども売られている今です。いろいろなお酢をあわせてみる精進もあります。

赤と白色の縁起のよい紅白なますをつけられていると、心が浮きたち、よい食事ができそうだという気持ちになりませんか、なりますよね、なりましたね。

じゃがいものサラダ

じゃがいもをすり鉢ですり、マヨネーズをかたすみにしぼりだす素朴なサラダ。喰うマネをするものなのでマヨネーズは食べます。ゆでたり蒸したりしたじゃがいもをするものと思いますが、そこは書かれていません。

単純なレシピです。しかし、すりつぶすジャガイも種類のちがいから、いろいろな食感になります。

いつまでもほっくりとした形が残るじゃがいも、トロトロにソースのようにとけるじゃがいも、いろいろなジャガイモがあります。

じゃがいもの状態を確認しあわせる野菜を選ぶ精進。

レタスとリンゴを混ぜあわせると、新鮮な風味のサラダになります。ブランデーに漬けたリンゴをつかいました。ブランデーの高貴な香り、リンゴとレタスの食感、すべてをまるく収める度量のあるじゃがいもの旨味。

里芋の胡桃和え

里芋の蒸し皮をむいておきます(冷凍のできあいを使った)。ここで問題になることがひとつ、ぬくぬくを食べるのか、ひやして食べるのか書かれていおりませぬ。

胡桃をすり鉢ですり、醤油と砂糖、塩で味をととのえます。

胡桃と和えた白い里芋は、ぽってりと白くまるい風味になります。はじめからひとつの食材であったかのように相性のよい胡桃と里芋です。胡桃の脂質が、なめらかな里芋に染みこんでいます。

絹さやの胡麻和え

よく炒った胡麻をたんねんにすり鉢ですります。胡麻をすっていると油が染みでてきます。油にもなる良質な油です。すった胡麻に醤油と砂糖、ミリンで味つけをします。

絹さやは塩をいれたお湯でサッとゆであげましょう。青く小さい豆のコリッとした食感をたのしみたいものです。

しっとりとさせた胡麻と若くみずみずしい絹さやと和えましょう。

口にのせると胡麻のうすい旨味の膜がはられます。旨味の膜のしたに、さっぱりとしたみずみずしい皮のはじける食感。そして、コリッとする若い栄養のつまった豆の食感。3つの食感をたのしめる一品です。

絹さやは、蒸しあげたのち器に盛りつけ、醤油か麺つゆをかけまわし、生姜をのせる、だけで料理になる強い風味を持っていると思います。

春と夏のあいだに力をつけた新鮮な香りと風味が、醤油と麺つゆの香りに混ざり浮きあがり、生姜の丸い満月のような辛味と混ざりあいます。

五目和え

五種類の食材を和えるから五目和えなのか、そこは書かれていません。冷蔵庫にある食材を集め、調味料で煮たのちゴマと豆腐をすり酢であえたものに和える料理です。

干しシイタケを水で戻し、出汁をとっておきます。その出汁で細くきった油揚げを煮ました。大根には細く切り塩をふりかえ水分をだし強くしぼってきます。

戻したシイタケや麩、こんにゃくを醤油と日本酒で軽く煮ました。

冷ました食材と豆腐とゴマ、酢で作ったものに和えます。

作るひとの個性がでる料理です。味を豪勢なものにするか、素朴な味にするか、見ためにこだわるか、いろいろと精進できます。

くるみの味噌和え

白味噌と信州味噌をすり鉢で混ぜあわせ、みりんと砂糖で味をととのえます。そこに砕いたくるみを混ぜ作る料理です。

味噌にくるみをいれるだけ、それだけで、ここまで雄大な風味になるのかと驚かされます。信州は軽井沢のくるみの木の隙間から見える富士山の裾野のように広がるお味です。

すこし焦げめをつけてやるのもよいものです。

ビールから日本酒、ウイスキーなどに確実にあいます。左党の心をがっちりワシ掴みできる握力のつよい料理です。

食べたくなれば、すぐに作れるお手軽さが、しみじみとありがたいものです。また、作り置きにも適しています。冷蔵庫のスミに常にしこんであります。味噌と混ぜあわせたくるみ。

隠元豆の胡麻和え

塩をいれたお湯で隠元豆をサッとゆでます。

黒ゴマをすり鉢ですり油をにじませておきます。醤油や砂糖、塩で味をととのえましょう。ゆでた隠元豆と黒ゴマを混ぜあわせます。

胡麻のこうばしい香り、隠元豆の太陽をあびた滋味ある香りが、器のなかで静かに混ざりあっています。

隠元豆のさっくりした食感。隠元豆の種よりも小さい胡麻ですが、隠元豆にたりない油分的な旨味と香味をくわえています。

芋あえ

芋であれば、なんの芋でもよい書かれています。お家に転がっている、すこし寂しそうな顔をしている芋を調理してあげましょう。

芋を蒸しあげ、醤油と味噌で味つけをします。日本が世界にほこるふたつの発酵調味料と芋で作りあげる単純な料理です。単純なだけに、つかった芋の味と風味、食感を確認しながら、やわらかくしあげるか、からくしあげるか、そのときの気候や温度、食べる人の体調しだい、一期一会。

すこし青いモノをちらしてやれば、目も喜びだします。

こごめの胡麻和え

こごめのくるりと丸まった部分のみをゆでます。かたい茎は捨てると書かれていますが、天ぷらにし食べました。

すり鉢ですった黒ゴマに塩や味噌をいれ味をととのえましょう。こごめを黒ゴマとあえれば出来上がりです。

こごめの丸まった部分の柔らかい部分が歯にあたり、黒ゴマの風味と混ざりあいます。苦さと香ばしさが混ざりあい、ふわりと口のなかにて春という季節そのものが咲いたような趣ある香りを感じられます。

うどの和えもの

うどは栽培できるようになりました。お安く買えるようになった山菜です。春の訪れをかんじられるお財布にやさしいうど。

うどの皮を厚くむき酢をいれた水につけましょう。うどの水を切ったのちお湯でゆでると色が白くなり色っぽくなります。

和えものと書かれていますが、タケノコにページをとられすぎており、うどの下ごしらえの方法しか書かれていません。

くるみをすり信州みそと混ぜあわせたものとあわせました。

しっとりと濃く豊かな風味が、淡泊に白いうどの風味をひきたてます。うどの大木などと言われますが、財布に優しく春の訪れをかんじられるうどを愛します。

みょうがの味噌和え

土から飛びでたばかりのみょうがに見える料理。

赤味噌と山椒の実をすり鉢にてすります。そこへ、みょうがをいれ味噌と混ぜあわましょう。

すぐに食べれます。みょうがの香りが新鮮で食感もパリッと強いものです。1~2時間ほど味噌に漬けておいたみょうが、これもおいしいものです。

みょうがから水分がにじみで風味が濃くなり、しんなりとした食感になります。赤味噌のこってりした風味のあとに、みょうがの清廉潔白な若い香り、そして小粒でもピリッとくる山椒。舌のうえの汚れがゴッソリと洗いながされます。

白米の甘さや日本酒の風味をしっかりと舌で感じられるようになります。

夏になれば、なにはなくとも、まずみょうがの味噌和え。みょうがの味噌和えを食べていると、つぎの料理を食べるのを忘れるぐらい夢中になります。

いや、まてよ、水上勉も書いていました、みょうがを食べるとバカになると、おかげでつぎの料理の存在を忘れてしまうのではないでしょうか。どう思います。

ぜんまいの白和え

信州の山をさがせば生のぜんまいがあるとは書かれています。しかし、ぜんまいだけは乾燥ぜんまいを料理につかうと水上勉は書いています。

日本全国どこでも手にいれやすい乾燥ぜんまいを使った精進料理です。水煮ぜんまいでも作れます。

乾燥ぜんまいを水につけ、ふっくらとしたぜんまいに戻しておきましょう。水煮はそのまま料理にとりかかれます。

水上勉流ではありませんが、うっすらと醤油と椎茸と昆布でとった出汁で煮てから和えるのを好みます。

ゴマをする、そして、水をきった豆腐をいれ粘りがでるまですりましょう。お酢と砂糖をいれ味をととのえます。

塩をいれたお湯でゆであげたニンジンをくわえると見ためもよくなります。

ふわりとした豆腐とゴマにつつまれたぜんまいは、新雪にうもれたような見た目に。柔らかさのなかに、干された春光をかんじさせてくれるぜんまいの風味。奥ゆかしいお味です。

わかめとねぎのぬた

ゆでたねぎと酢洗いしたわかめをぬたで混ぜあわせた一品。

わかめは乾燥されたうすいものではなく、生か塩蔵のわかめを使うとねぎの食感に負けません。九条ねぎで作ったと書かれています。九条ねぎではありません。あるもので工夫する、これ精進なり。

ねぎは熱湯でさっとゆであげ冷ましておきましょう。わかめは酢で洗っておきます。ぬたですが、白や赤などいろいろな味噌を混ぜると書かれています。お好みの味にしあげてください。

味噌の甘味とわかめの風味が溶けあい、ぬるりと口にはいってきた瞬間、パリッとねぎの青い香りの爆発がおこります。ぬるり、しゃくり、ふたつの食感のゆれ幅を堪能できます。

たんぽぽの白酢和え

野路のをさけ、なるべく草むらの中のをえらんで摘むのも犬の小便を警戒するわけだが、犬の小便のかかったのにも元気がもらえるのがたんぽぽである。

引用元:精進百選

せっしゃ精進不足である、と感じざるをえない水上勉のありがたいお言葉。

はらっぱが減ったのか、たんぽぽも小さいものがおおく、ゆでたたんぽぽは、みみっちいと感じられるほど小さいものになります。

春にしか味わえないたんぽぽですが、テマヒマを考えると苦労がむくわれない一品です。しっかりとゆでなければなりません。しっかりとゆでなければ、ドが5つほど苦い味をかみしめることになります。

たんぽぽではなく、菜の花を白酢和えにするのを好みます。黄色い花と緑が、温かくほがらかな春の訪れをつげてくれるでしょう。

干し柿の白和え

干し柿とコンニャクや干しシイタケと水を切った豆腐を混ぜあわせた一品。

干し柿とコンニャクとシイタケなんてあうんかいな、と思われたことでしょう、わかります、わかりすぎるぐらいわかります。

それが滅法界あうんです。干し柿と豆腐にくるまれたコンニャクと干しシイタケは、甘さの隠し味になっています。干し柿の甘さに苦さや食感のアクセントをくわえてくれるのです。

干し柿とヨウカンの白和え

干し柿とヨウカンを細くきります。水を切った豆腐と胡桃をすり鉢で混ぜあわせたものに干し柿とヨウカンを混ぜあわせました。

3時のおやつや、ブランデーやウイスキーといっしょにたのしめる甘味。

干し柿のねっとりとした妖艶な甘さ、じっくりと溶けるヨウカンの神妙な甘さを白い豆腐の膜がやわらかく雅なものにしあげてくれています。

干し柿と豆腐だけで十分に甘味になります。そこに何をくわえるかは、あなたしだいです。干し柿と豆腐は減量にも役だつでしょう。そして、しっかりと甘いものを食べたという満足感をえられます。

タケノコ

タケノコは、水上勉の好む食材のひとつです。『 土を喰う日々 』にても幼少からのタケノコの思い出をツラツラとほぼ一章ほど書いています。

水煮のある今、いつでもタケノコを食べられます。ただやはり旬のタケノコを味わうのは、まさに春の土を喰う、そのような味覚をたのしめる食材でしょう。

タケノコ料理をひとつにまとめました。旬のタケノコをたっぷりとたのしめる料理の数々。あなたのタケノコ料理のあたらしい扉をあけてくれるかもしれません。

  • タケノコご飯
  • タケノコの炊きあわせ
  • 若タケ汁
  • タケノコのから揚げ
  • タケノコの白味噌あえ
  • タケノコとしょうがのいためもの

新鮮なタケノコは刺身、もしくは焼くだけで食べられるそうです。交通の便はよくなりました。しかし、なかなかそのようなタケノコと出会う機会はありません。

なので、皮がついたままのタケノコを大き目の鍋にいれます。水を貼り米ぬかをいれコトコトと柔らかくなるまで炊きあげましょう。

タケノコご飯

白米を洗い、炊飯器に白米と昆布だしと薄口醤油、日本酒、タケノコをいれ炊きあげました。土鍋などを使うところでしょうが、そこは土を喰うマネをするものですから。

薄口醤油を使うのは、あくまでもタケノコの薄白黄色を残したいと思ったから使いました。こってりと色をつけ炊きあげたタケノコもそれはそれは。

土に埋まり、飛びでてくるタケノコから、なぜこれほどのかぐわしい香りがしてくるのでしょうか。白米と炊くことでかぐわしい香りが、いちだんと厚く高く五重塔のようにそびえるように思うのです。

土から飛びでる硬さと日本人の叡智の結晶である白米のやわらかさの加減がよく、酒飲みも御猪口を手放しタケノコご飯をかきこむ、それほどの香りと魅力がある炊き込みご飯、それがタケノコご飯。

タケノコ尽くしには、まずかかせない一品だと思います。

タケノコの炊きあわせ・若タケ汁

タケノコのぶ厚い輪をコトコト煮こめば、タケノコの炊きあわせ。やわからい先を煮こめば若タケ汁。

このあたりは、さらりと書かれており、きちんとした分類ではありません。なんとなくそうかなと便宜上わけてみました。

昆布だしと醤油、砂糖で煮つめ、最後にわかめをいれる、あれば山椒の葉を飾るとよしと書かれています。すこし日本酒も足し炊きました。

がっつりとしたタケノコの歯ごたえ、そして、すこし苦い輪の部分のあるタケノコの炊きあわせ。風にそよぐほど柔らかく炊きあげた若タケ汁。

そのときどきの食べたい気分にあわせてお汁を作りあげる精進。

タケノコのから揚げ

柔らかく炊いたタケノコを醤油と砂糖でととのえた汁で煮ると書かれています。このままでは味が濃すぎたので、醤油と日本酒、みりんを2:1:1で作った汁で煮ました。タケノコのうす味の佃煮のようなものでしょうか、それを軽く揚げた料理です。

カリッとした食感、風にゆられる破竹のようにしなやかなタケノコ香りが醤油の香りと跳ねます。タケノコは、味をつけてから揚げたほうがよいものになりました。

中国の寺では、タケノコを醤油で煮こみ、そのタケノコを煮こんだ醤油が絶品だという話を読んだことがあります。それはどのような味なのだろうか、とタケノコのから揚げを食べながら想像するのです。

タケノコの白味噌和え

ほんらいは木の芽和えなのですが、木の芽がありません。そこであるもので代用し白味噌和えと、あいなりました。

ゆでたタケノコを薄く切り、みりんでのばした白味噌と混ぜあわせる単純明快、竹をパカッと割ったような料理です。

タケノコのまわりに白味噌を和えることで、あまい白い膜がはられます。パリッとした食感のまえに、ぬっとした膜があり、いっそうタケノコの食感を強いものにしています。

ここに山椒の実をすりいれ、爽やかさをくわえると、甘、苦、爽の三つがそろう通な料理になります。

タケノコとしょうがのいためもの

しょうがとタケノコをいためたものと書かれているだけで、味付けもなにも書かれていません。いためるだけなのか、醤油でもたらすのか、そこは各々精進しやさんせ、と水上勉の言葉が聴こえてくるようです。

このレシピは精進し、己がレシピにする価値あり、と強くおすすめします。

不思議に、あくの消えた甘味が、しょうがの辛さとマッチして、めしにまぶせば何杯喰えるかきりがない。

引用元:土を喰う日々

タケノコの苦さ、甘さ、あくが消え、口のうえで溶ける上等なタケノコとでもいえましょうか。そこにピリッとした土の香りのあるしょうがの辛さがあいます。上品すぎず、下品すぎない、精妙なバランスです。

ここに醤油や塩、日本酒、みりん、梅干し、あげくのはてには、生臭なのでカツオ節をふりいれる、などなど己のレシピにするために精進しました。水煮のタケノコとしょうがをいためるだけでご飯や酒のつまみになる定番の常備菜ができます。

冷蔵庫にいれておけば、白米にまぶしてもよく、酒のあてにもよく、はたまたナマケモノのお供袋ラーメンのつけあわせとしてこれ以上の御馳走はありません。

梅干とかりかり梅、その他の梅料理

梅干とかりかり梅の作り方は、長くなるので別記事に書きました。

また、梅干を使った梅干料理も再現しています。

分類不可

淡雪豆腐

見ためも涼しげな淡雪豆腐。食べても涼しい一品です。べっとりと暑い季節に食べるのに、まっことぴったりの料理です。

使う豆腐は木綿よりも絹がよいでしょう。水気を切った豆腐を手でくずし器にいれます。そして、寒天をお湯でとかし豆腐をいれた器にいれます。冷蔵庫で冷やし切りわければ淡雪豆腐の出来上がり。

なんと、かんたんで、それでいて見栄えもよく、涼しげ、食欲がない日でもひやりとした食感をたのしめます。冷味と書かれていた淡雪豆腐。夏におひとついかが。

うどんのように細くきりわけると眼も冷え、つるりと口をとおり胃に流れていくでしょう。お好みの調味料をつけめしあがれ。

八杯豆腐

豆腐をうどんのように切ったのち、しずかにお湯でゆでる。お湯に塩と醤油、砂糖をいれ豆腐に味をつけておきました。

器にゆでた豆腐をいれましょう。とろみをつけておいたお湯を豆腐のうえからかけます。すりおろしたた人参をのせました。

白と赤の対比がうつくしい一品です。なぜ、八杯なのかはわからないと書かれています。八杯ほどおかわりするほどおいしい、というわけでもありません。

大根おろしをのせるのもまたよいものです。

山椒の醤油漬け

山椒をゆで、醤油に漬けこんでおきます。醤油にいれられた山椒はわるくなりにくいです、山椒が空気にふれてしまうと悪くなりますよ。

一年を通して山椒の辛味をたのしめるのです。また、山椒の風味がとけこんだ醤油の味は、ピリッとした辛さと清涼な香りがあります。山椒醤油を料理につかえば、ゆるい自然な山椒の香りを追加できます。

ご飯に山椒の実と、山椒の風味が溶けこんだ醤油をすこしたらすと、山椒の緑の澄んだ辛味がつ~んと香り、熱せられた醤油の香気もぷ~んと白い湯気になり鼻に到達します。

水上勉の祖母が愛した山椒の食べ方です。83歳まで生きた祖母にあやかりたいと書かれています。山椒好きの私もあやかりたくおもいご飯には醤油の山椒漬けをのせています。

ピリリッとした山椒の風味は、舌にこびりついた汚れを洗い流してくれるように感じるのです。

実山椒の甘辛

醤油に漬けておいた実山椒と醤油をフライパンにいれ、弱火でことこと煮ます。

実山椒がお好みの硬さになるまで煮ましょう。写真だけしか掲載されておらず作り方は土のなかに埋められた宝物のように見えません。

醤油の風味が丸くなり、尖っていた実山椒の辛さもどことなく丸くなり醤油の風味と香りと山椒の辛味は精妙に混ざりあいます。もともとひとつの調味料だったと感じられるのです。

ほどよい山椒の辛味、そして醤油の丸い風味がフッと香ります。むんずと食欲のヒモをひっぱられる風味と香りです。温かい白米のうえにのせると、山椒のピリッとした清澄にして清冽な香りが白米の甘さがひきたてるのです。

きゅうりやキャベツなどと混ぜあわせ即席のサラダにするのもたのしいものです。

しめじ炊き込みご飯

土鍋や炊飯器に米と水、酒をいれます。塩と醤油を少々いれましょう。しめじと油揚げをいれ炊きあげれば出来あがります。

香りまつたけ、味しめじと言われています。しかし、炊きあげたしめじ炊き込みご飯は、野趣あふれる香り、醤油と油揚げの香気、オコゲのかんばしい香りが混ざりあった香りもけっして負けてはいませんゾ。

しめじの風味が白米ひとつひとうに染みわたっています。しめじの味は、油揚げの油分にて白米のなかにとじこめられています。

材料は、しめじと油揚げ、たったこれだけ。すくない材料、最小限の味付けだけで、炊き込みご飯の頂きにたどりつけるであろう香りと風味があります。

お値段のことを考えるのであれば、しめじちゃんのなんと健気なことか。なお、天然もののしめじちゃんのお値段は。

女性にしめじ炊き込みご飯をだすと、よろこばれぬことはない、と書かれています。女性の知り合いがいないので、そこは未知数ではあります。

えんどう豆のご飯

精進の王者と問われ、えんどうめしと答えた人がいると書かれています。

精進が足りていないモノは、そうだろうかと首をかしげます。それでも春の訪れを感じさせてくれる、緑と白のご飯はたのしいものです。

水上勉流は、えんどうとご飯は別々にしあげます。さやからだしたえんどう豆は、塩をいれたお湯で、色よくゆであげます。色よく、これがなかなかむずかしいです。火を通しすぎると色がくすむ、火の通りが浅いとかたい、ちいさい緑の豆をゆでるだけ、されど集中しなければいけない調理工程です。

昆布をひき日本酒をいれ炊いた白米と色よくゆであげたえんどう豆を混ぜあわせます。

くたりとしていないえんどう豆。爽やかな新緑の香り、ぴんっと一人だちしたえんどう豆の風味のイキがいいです。

大根の一夜漬け

一夜漬けをきらって、どうして夏の料理の門が入れよう。

引用元:土を喰う日々

と、強く書かれているが、なんとことはない、大根を切り塩をふりかけ、大根葉と混ぜあわせ、卓上漬物器にいれておけば作れます。

夏だけでなく、春夏秋冬たのしめる一夜漬けです。

昆布や昆布茶、塩昆布、または唐辛子や砂糖などをいれ、その日その日に食べたい味にしあげるたのしみもあります。

むずかしくお洒落になどと考えずに、百均にて卓上漬物容器を買い、できれば葉っぱのついた大根を買い、葉っぱと大根を切り刻み卓上漬物容器にいれ、一夜放っておくだけで作れるのです。そして、百均で買える容器にいれておけばいいのです。

たくわんとはちがった大根の若くみずみずしい潤な風味のある一夜漬。葉っぱの太陽をあびた力ある風味。ほんとに、これほど作るのが楽で妙味な一夜漬けをしりません。

朝ごはんのお供に、晩酌のお供にも、ダイエットのお供にもなる一夜漬けです。

それでいて夏の料理の登竜門を簡単にくぐれます。これであなたも、精進料理の道の第一歩をふみだせますね。

糠漬け

常温で糠床を管理することが重要だと書かれています。土を喰うマネをするものは、冷蔵庫で糠床を管理しています。

おいしい糠漬けがあれば、浮気性な亭主も家に帰ってくると書いた檀一雄。マニュキュアがはやりだしてから家庭から糠床が消えたと書いた水上勉。

男女平等の時代です。男性が糠床を混ぜたり、野菜を漬けたりする時代になりました。

水上勉が茄子の王者といいし加茂茄子。塩のふりがあまかったのか、みょうばんをつかわず、また、糠床に鉄をいれていないからか、加茂茄子の鮮やかな紫色がぬけています。

味は問題ないのですが、やはり料理は見た目も重要だなと思いました。茄子の色ぬけ対策をしなければと思いました。

あげながし

揚げて、水でながし、煮て作る豆腐料理。めんどくさいの極致に位置する豆腐料理。この豆腐料理を提供されたのであれば、心して食すべし、分かりましたか、分かりましたね。

豆腐の水を切り、ゴマ油で豆腐を素揚げにします。豆腐の表面に焦げがついたら水をはったボウルにいれ油をながすのです。

片栗粉か葛湯をといたお湯を用意しておき、揚げながした豆腐を煮ます。わさびなどをかけて食すと書かれています。

カチッとした表面に、しっとりとトロミがつき柔和な食感です。そして、豆腐の内部は、厚揚げのようにパサパサではありません。冷ややっこのようにしっとりと涼な口あたりです。

温かさと冷たさの二律構造。見ためからは、想像できない内側の食感。食したかたは一驚することうけあい。その顔を見るためにあげながしを作るのも一興。

湯やっこ

ただの湯豆腐に見えることでしょう。しかし、お湯でなく葛湯でゆであげるのがこの料理の妙。

葛湯でなく片栗粉を使いましたが。ぼこぼこと泡だつ片栗粉を溶いたお湯に豆腐をいれ温めます。

別のお鍋に醤油を煮つめ、花がつおをふりいれお湯でのばしておきましょう。

温めておいた器に豆腐をいれ、そのうえから醤油と花がつおで作った汁をかけまわします。

トロミのついたお湯で煮るだけでここまで豆腐の食感がかわるとは、ほそいお釈迦さまの眼すらカッと開きそうな驚きの食感です。とろりとした豆腐の食感は、とびきり上質な温泉からあがったあとの肌のようにしっとりとしています。

お好みで青ネギやショウガをのせるとよいでしょう。

長芋の短冊

長芋を短冊に切る、そしてお湯でゆでると書かれています。ぬめりが好きなので、ゆでずに長芋を盛りつけ青のりをちらす。

ふだんは、長芋のヒゲをコンロで焼き、皮ごと砕き、青のりをふって食べています。量産ものの長芋の皮は、うすく食べられるのです。

まさに、素材の味そのもので勝負する精進料理。梅干しをのせると色の対比がうかびあがり、酸味とぬめりが混ざり爽やかになり食べやすいです。

大根でもよいと書かれています。

長芋のとろろ汁

山芋がよいと書かれています。しかし、山芋はなかなか手にはいりません。長芋でよいと書かれているので思う存分、白くキメ細かい泡といった長芋のとろろ汁をたのしみましょう。

すり鉢で長芋をすり、お吸物ほどのお出汁でのばします。器にいれ、青のりをちらせば完成。

開高健の著作に、水上勉は毎晩毎晩、丼いっぱいの長芋と1粒のにんにくをおろしたものを飲んでいたと書かれていました。水上勉は、長芋とにんにくのことは書いていません。

開高健の創作なのか、おなじ話を書かない水上勉のポリシーなのか、真偽は不明です。

長芋とにんにくをおろしたのを飲むと、おそろしい量のうんこがほとばしったと開高健は言う、体がかるうなったやろと水上勉は答える、便秘でお悩みのかた、1杯の長芋いかが。

麦飯でとろろご飯にしてもよいものです。

朴訥とした麦飯が、つるつると胃に流れていきます。

じゃがいものサラダ

じゃがいもとニンジンは細く切り、蒸しあげ冷ましておきましょう。きゅうりは塩をふったあと、これまた細く切っておきます。

白味噌をすり鉢ですり、酢や塩、砂糖で味をととのえましょう。溶きがらしやマスタードをくわえるとまるでマヨネーズのようなこってりとした風味なります。マヨネーズよりも低カロリーです。

土を喰うマネをするモノです。ゆで卵にもぴったりの白味噌でございます。

いろとりどりの野菜をそろえ、火をいれたものがあると食卓が明るいものなるように感じます。

蕪の一夜漬け

蕪をうすく切り、蕪の葉っぱと塩、昆布、唐辛子を卓上漬物容器にいれておくと作れる一品。

大根の一夜漬けとくらべると雅であり、しっとりした気品ある柔肌。

蕪は蕪と塩だけで完成した上品な味になります。そこに太陽を浴びた元気な葉を混ぜこむことで清く元気な味になります。昆布の旨味と唐辛子の辛味はお好みで。

白米のあてにもなり、サラダにもなり、日本酒のあてにもなります。蕪を買うたびに作るようになった一品。

白魚

こんにゃくを細く切ること、これがこの料理のミソです。いかに白魚のごとく細く切るか、それが精進です。こんにゃくは安く、包丁にて材料を細く切る練習を思うぞんぶんできる食材だと思います。白魚のように、見えていますでしょうか。

細く切ったこんにゃくに、うどん粉やくず粉をまぶしお湯でゆでるとできあがります。白魚のようにつるりとした食感。またあるかないかの香りが、白魚らしさを演出しているではありませんか。絶滅も噂される白魚。こんにゃくで白魚を作りだす精進。

酢味噌にいれたり白魚の食べ方は自由です。

白魚をかき揚げに、お汁をかけた丼。眼をとじて食べると宍道湖の白魚がちいさく跳ねる風景が。

ベジタリンではないので、卵でとじるのを好みます(豆腐でとじるのを好んだ水上勉)。

また、卵でとじた白魚をお吸物にいれるのを好んだ文豪でありエッセイスト、釣り師であった開高健のマネをするのもよいでしょう。

ノーブルな味がしますゾ。

もろ胡瓜

最高の精進料理だと思う。

引用元:精進百選

水上勉をして、そういわしめるもろ胡瓜。キュウリはできれば、トゲがあり、触るとチクリといたく、割ると水がほとばしるようなキュウリをつかいたいところです。なければないでかまいません。

わたしにいたっては、もろきゅうを用意していません。もろきゅうは、あまり使いみちがないのが現実。なので、信州味噌にキュウリをつけ、パリっといただいている。また、山椒や梅干しを混ぜると味が変化し飽きることがありません。

キュウリともろきゅうがあれば、最高の精進料理をつくれる。皆さまも如何。

もやしの二杯酢

もやしをゆで、酢と醤油をまぜあわせた二杯酢をかけ、七味ごまをふりかけるシンプルな精進料理。

単純なだけに、もやしのゆで時間、酢と醤油の調合割合。あなたごのみにしあがげる精進が必要。

もやしの風味をどれだけ残すのか、青くさくてもダメ、また、ヘニャとゆですぎてもダメ。なかなか味がきまらず、作るたびに一期一会の味とあいなります。酒のアテにもなり、ダイエットのお供になる精進料理。

カチ栗

鬼皮をむかずに栗を乾燥させます。

しばらく乾燥させましょう。乾燥させた栗をふると、カラカラと栗が動く音がするようになります。鬼皮をむき栗をとりだしましょう。

カチ栗を口にいれ舌のうえにのせていると、氷砂糖のように甘くなると書かれていますが。

栗めし

カチ栗さえ作っておけば、いつでも好きなときに栗めしをたのしめます。

カチ栗と米、調味料を炊飯器にいれ炊くだけです。すこしモチ米をいれるのを好みます。

カチ栗はしっかりとした噛みごたえから、甘くほろりと崩れる食感になります。どことなく白米にも栗の風味がやわらかくまぶされているように感じるのです。

乾物は、旨味と風味がましている食材がおおいです。カチ栗も乾燥させています、旨味と風味がましているかもしれません。

水上勉は、新栗をつかった栗めしの作り方も書いています。栗の渋皮はのこし、飯ぜんたいに栗の風味をまぶすのが肝要と。

新栗を手にいれたかたはお試しください。

杏のシャーベット

数少ないデザートレシピ。このデザートは、杏しか使っていない。杏には、なにもくわえる必要がない、それほど完の璧であり、一点の曇りすらないデザートでございます。

杏の種をとりだし、しっかりとすり鉢ですりましょう。すった杏を容器にいれ冷凍庫で凍らしておきます。

料理を食べおわったあとに提供する、炎天下のなか訪れた人に提供する、おかわりを所望されることうけあいのデザートです。

ひやりっとした食感。そして、天然の甘味がお口のなかにゆっくりとひろがります。天然の甘味は、舌にこびず、脳が疲れません。天然の甘味のアロマは舌と脳を癒してくれます。

杏のシャーベットにブランディーをかけまわすと、悦であり、涼です。

干し柿とはったい粉

おそろしい 美味しさ!

味噌にしか見えないでしょうが、甘味です。それも極上の甘味です。

渋柿を焚き火で柔らかくしたのち、はったい粉と混ぜると書かれています。渋柿の生など手にはいりません。そこで干し柿を火で炙り、はったい粉と混ぜました。

はったい粉とは、麦を炙った甘い香りのする粉です。その甘い香りのする粉と、和菓子の甘さの頂点である干し柿とを混ぜあわせた甘味です。

天然の素材だけで作られた甘いお菓子のコンテストがあるのであれば、この甘味を1位に推薦します。ほっこりと焼かれた柿の柔和な甘さ、かんばしい麦の香り、柔らかくねっとりとした食感の甘味です。

自然が造りだした、柔らかく和の甘さの二等辺三角形の頂点に君臨する甘味。

水上勉『 土を喰う日々 』『 精進百選 』を読みレシピ再現し食べた感想【 まとめ 】

『 土を喰う日々 』『 精進百選 』を読んだおかげで精進料理の枠がずずっいとひろがりました。

体によいと言われている野菜や豆腐、こんにゃくなどが主体の精進料理。体のなから健康になったように感じます。劇的に健康になったとは感じませんが、どことなく調子がよいなと感じられるようになりました。

精進料理の精神は、眼のまえにある食材を丁寧に扱う、高い安い食材どちらも平等に丹精こめて調理する、また調理中は食材にしっかりと集中する、いつもの調理する時間が、禅になり、修行になるのです。

座禅をせずとも、食材を丁寧に調理していると、お釈迦様や道元和尚がたどりついた悟りの境地にたどりつけるかもしれません。

食材に語りかける日々、食材の声を聴く日々、是日々精進。

やってみてわかるということは、あるものだ。精進しないで、「精進」がわかるはずもない、こんなことがわかったというのである。大根や葉っぱに教えられたというのである。

引用元:土を喰う日々

わたしが作った精進料理記事はこちらになります。

水上勉のエッセイを読んだ感想も書いています。

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