この記事は、『 檀流クッキング 』で紹介されている鍋料理を再現し食べた感想を書いている記事です。
「 キリタンポ鍋 」「 アンコウ鍋 」「 ショッツル鍋 」「 タイチリ 」「 博多の水炊き 」を再現しました。
体の芯から温まる珠玉の鍋レシピたち。
キリタンポ鍋にはキリタンポ、アンコウ鍋にはアンコウ、ショッツル鍋にはショッツル、タイチリには鯛、博多の水炊きには博多、いや、鶏肉が必要になります。
だいたいの鍋は、昆布を鍋にいれ食材をいれ醤油や酒などで味つけをします。
醤油のいれる量は舌ではかってください。濃くなったときはお湯をいれれば修正できます。
野菜などはお好みで用意してください。キノコとゴボウをいれると味がよくなると書かれている鍋がおおいです。
『 檀流クッキング 』とは、無頼派とよばれた文豪であり料理好きでもあった檀一雄が書きしるした料理エッセイ本です。
男性作家が書いた料理エッセイの金字塔でありパイオニアともいえる一冊。それが『 檀流クッキング 』
おおよその目分量、経験で調理する実践的レシピが網羅されています。
キリタンポ鍋
キリタンポのほかに鶏肉とマイタケがあるとよいと書かれています。
比内地鶏や天然マイタケがあるとよいのでしょうが、とてもとても。ちょっいとよい鶏肉と栽培されたマイタケで代用しましょう。
キリタンポのお米の割りあいは、ウルチ米9にモチ米1。つまり90gのウルチ米にモチ米10gの割合です。
炊きあげたお米をめん棒などでつきます。完全にモチにしてしまわずに米の形が残っている状態がのぞましいようです。
竹串にまきつけ、塩水をふくましたナプキンのうえでトントンと形をととのえます。
ぎゅっと串に米をにぎりつければよいかと。
炭火やガス火、コンロなどで焦げめをつけます。
焼きめをつけたあとは、棒をはずしておきましょう。5センチほどの長さに切っておくと鍋にいれやすいです。
キリタンポを作っているあいだに鶏だしをとっておけば時間短縮になります。
鶏がらと青ネギを保温調理に放りこんでおきました。
鶏だしに醤油やみりん、お砂糖などで味をつけましょう。お吸物より、少しばかり甘カラいダシにすると書かれています。
ここはお好みで構わないと思います。
煮えにくい食材から鍋に投入しましょう。鶏肉やマイタケ、ゴボウなどをさきにいれておくと鍋の風味が厚く強くなります。
キリンタンポは煮くずれやすいです。食べる直前に鍋にいれるとよいでしょう。
そのキリンタンポに鶏のうまみがにじみこんで、つくづくとおいしい秋の料理である。
引用元:檀流クッキング
鶏だけでなく様々な出汁がしみこんだキリンタンポは、焦げたところの歯ごたえは軽快、そして香りたかい。ほろほろと崩れたところは、鶏だしで煮こまれたマイタケやネギ、ゴボウなどの滋味あるうまみがしみこんでいるおかゆのようです。
秋の料理と書かれています。しかし、寒い冬にキリンタンポに舌鼓をうってもかまいません。
春と秋がなくなった日本ですからね。
アンコウ鍋
アンコウを買いさえすれば、かんたんに作れるアンコウ鍋。
けれども、檀一雄は書く、日本の庶民料理の傑作のひとつだといっても、けっしていい過ぎではないと。
できれば白い肉片だけでなく、ベロベロとした皮やヒラなどがついたアンコウを買いましょう。
煮こまればベロベロは柔らかくなり、溶けたりし、白い鍋のお湯が黄金色になり、とろりとした旨味を感じられる極上の出汁になります。
お口のまわりがテラテラと光るほどのコラーゲンを堪能できます。
アンコウを買ってきたら肉片を熱湯にさっとくぐらせ霜降りをしておきましょう。
アンコウ鍋にいれる野菜はなんでもよろしいが、ウドやミツバ、ギンナンなどがあるとよろしいと書かれています。
お好みの野菜をいれてください。
豆腐とシラタキはかかせぬとも書かれています。シラタキよりもうどんをいれるほうが好きです。
鍋に水とコンブをいれ、弱火で昆布だしをとりました。淡口醤油をいれお吸物より濃い目の味に加減したあげく、酒だの、みりんだのを、自分の好みの量だけ加えようと書かれています。
つまり自分の舌で味を調整するわけです。砂糖をいれてもよいと書かれています。
キモは酒蒸しにしたのち取り皿にくわえました。
醜悪ともいえる姿かたちのアンコウから、これほどの澄んだ出汁がとれるのかと驚かされます。
べろべろ、べらべらが溶けあわさった旨みは濃い、けれども後口は淡泊といえます。
アンコウの肉片も淡泊でおいしいです。しかし、アンコウ鍋の主役はアンコウの出汁がしみこんだ白い豆腐だと思いました。
しあわせを感じられる味になっている豆腐です。
コラーゲンを摂取でき、低カロリーで高たんぱくの豆腐を摂取できるアンコウ鍋。
白子のみそ鍋
檀一雄がエッセイを書いた自分には、すでにフグは高価なものになり、フグの白子は高嶺の花でした。
ならばと、フグと同等においしいタラの白子を使った鍋を紹介してくれました。
けれども、いまは、タラの白子さえもが。
できるだけブヨブヨでない張りきった白子を買い、昆布と白味噌、そして、タラの身と野菜、豆腐などがあれば作れる鍋です。
白子は、サッと湯通ししても、そのまま鍋にいれても、どちらもかまいません。
鍋に昆布と水をいれ、すこしの日本酒をくわえ弱火にかけます。
ふつふつと小さい泡が鍋肌についてきたら、白味噌をときいれます。
あまり辛くせずに、うっすらとした甘味を感じられるだけの白味噌を溶きいれたほうが、白子の淡い甘味をしっかりと堪能できます。
白味噌でなくとも作れます。ただ、白子と白味噌の甘さの相性は、滅法界よいものです。甘味と甘味がぶつかりあわず、溶けあい、妖艶とも気品ともいえる煌々とした甘味になります。
火が通りにくい野菜や食材をいれ弱火で煮ます。白子のみそ鍋は、白身魚との相性がよいです。親子鍋です。
煮ているあいだに、柚子の皮や紅葉おろし、青ネギなどの薬味を用意しておきましょう。
野菜や食材に火がとおったら、ハサミなどで白子をほどよい大きさに切り鍋にいれてください。いい塩梅に煮たのち取り皿にとりだします。
ブヨブヨの白子は溶けやすいです。ご注意ください。
白子の表面はむっちりとしており、白味噌の甘味がとろり。
白子を噛むと、プチッと水ようかんのように割れ、白子からは滑らかなクリームが飛びだします。
飛びだしたクリーム状ものには、あるかないかの淡い甘味あり。その甘味は、ねっとりと舌に浸透してきます。
できるだけ、新鮮な白子、生で食べられるような白子を手にいれる、それが、白子鍋をおいしく作る秘訣だと思いました。
ショッツル鍋
秋田の宝ともいえるショッツルさえあれば、お家でおてがるに作れるショッツル鍋。
ハタハタから作られた魚醤です、ショッツルは。魚醤は臭い、とのイメージがありました。
ちっとも、まったく臭くありませんでした。上等な料亭で味わうお吸物のようにノーブルな香りと風味です。
はんなりとした旨味があり、あとをひく味わいです。
パスタから味噌汁など様々な料理がおいしくなります、ショッツルをいれるだけで。
そのショッツルをいれて作る鍋です。
昆布と水を鍋にいれ弱火で出汁をとります。ショッツルと酒をくわえ、吸物よりもちょっとカラめぐらいの塩加減にととのえました。
ハタハタをいれるのが一番なのでしょうが、ハタハタの漁獲量は年々減少しており、ショッツルも高くなってきているいまです。
タイやオコゼ、キンメダイ、タラなどの白身魚がよいと書かれています。
そして、鶏のモツをぶちこむとも書かれています。クセがなくコリッとした鶏のモツとショッツルの相性は滅法界よいです。
鶏のモツはいまでも安いので思う存分ぶちこみましょう。
ソギゴボウをいれると香りが高い、あとは好きなものをいれるとよいと書かれています。
取り皿にダイコンおろし、ユズの皮をいれておくとさらに贅沢になります。
残ったお汁でうどんを煮たり、おじやを作ったり、ショッツルの最後の一滴までたのしみましょう。
鍋の素いらずのショッツル。
タイチリ
檀一雄が『 檀流クッキング 』を書いたときは、タイの値段が高かったようです。
いまの日本は、養殖技術が発達したおかげか、タイのアラはビールよりも安いお値段で買えます。
そのお安いタイのアラを使った鍋です。お財布にやさしいだけでなく、もちろんタイの澄んだ高貴な風味をたのしめる鍋です。
タイのアラは、鍋にいれる30分まえに塩をふっておき水分をぬいておきます。
土鍋に昆布と水をいれ弱火でだしをとりましょう。
『 檀流クッキング 』には書かれていませんが、タイのアラを先にしばらく煮ます。うっすらと白濁するようなタイのだしを抽出できるのです。
さて、タイチリにはモミジおろしとコウトウネギ(香りの高いネギ)が必要だと書かれています。
モミジおろしの作り方もしっかりと指南されています。大根の中央に穴をあけ、タネをとった唐辛子をつっこみ長さをそろえる、そして、ゆっくりとすりおろせばモミジおろしの完成です。
チューブのモミジおろしを使いました。
ユズの皮のひとそぎがあれば、それだけで御馳走になります。
博多の水炊き
ネギの薬味と、モミジおろしと、ユズだけは骨付きのブツ切りと一緒に用意して下さい。
引用元:檀流クッキング
そのように書かれてはいるが、鶏だしをとる鶏ガラも必要だったりします。
ジャバジャバと水で洗い鶏ガラの汚れをとりましょう。たっぷりと水をいれた鍋に鶏ガラをいれます。
そして、日本酒やネギ、ショウガなどをお好みでくわえコトコトと弱火で煮ます。
骨付きのブツ切りで鶏だしをとってもよいと思いました。
野菜などを用意しておきます。ハクサイやシュンギク、豆腐、シラタキ、タケノコ、シイタケなどなど。
鶏だしを土鍋にいれブツ切りの鶏肉をくわえ強火で煮ます。アクをすくい、火がとおったら、めいめいの取り皿に鶏肉ととりわけましょう。
塩味は各自でつけるようです。
地鶏で作るとよいのでしょうが、鶏ガラでだしをとっています。まじりっけのない澄明ともいえるスープを作れます。
シンプルな鶏の脂の旨味が漂い、こってりとまでいきませんが、醤油をくわえるだけでラーメンを作れそうなほどしっかりとした腰の強い鶏のスープです。
鶏肉や豆腐、野菜などをくわえながら食べてるとスープはどんどん濃くなりにぎやかになるでしょう。
〆はうどんか雑炊か、お好みで。
モミジおろしの作り方がふたたび指南されています。真ん中に唐辛子をうめます。
ゆっくりと金おろしですりました。
おそらくですが、キメが粗い金おろしではモミジおろしを作れません。
ジンギスカン鍋の作り方は別の記事に書いています。
『 檀流クッキング 』のレシピはこちらの記事にまとめています。
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