尾鈴山 山ねこ ノーマルと銅釜蒸留 芋焼酎を飲んだ感想を書いています。
洗練された焼酎の味わいは、辛口の日本酒やウォッカとかわらないほどに淡麗。
ゆえに、語れることは少ないです。
芋焼酎をはじめて飲むひとに、どの銘柄を飲めばいいかと尋ねられたら「山ねこより始めよ」と自信をもって伝えるほどに、飲みやすい焼酎です。
飲みやすい、だから味わいがない。そんなことはありません。
言葉で説明しにくい米と芋から醸しだされる果実のような爽やかで澄明な旨味は舌で歯茎でしっかりと実感できます。
ノーマルも銅釜蒸留は芋が原料です。山ねこのようにクセがなく、しなやかな味わいの芋焼酎は思いだせません。
それほどにデキのよい芋焼酎です。山ねこのように世間の流行から隠れすぎている。
もっと明るい場所でスポットをあびるべき焼酎だと思います。
芋が、メロンや栗、ジャガイモなどの味わいに変幻自在に化けて舌をたのしませてくれます。
山ねこ ストレート レビュー

ノーマル
蒸留されきっているといいほどに静謐な水面。
日本酒よりもアルコール度数が高いのにもかかわらず、たちのぼる気配は冷たい森林にたれこめる霧。
すこし湖面をゆすると、ライチやマスカットによく似た果実感のなかに、すこしだけ香辛料を煎ったようなビターな風味あり。
口あたりは、猫が音なく歩くように軽快で、コロコロとのどをなでられたような可愛らしい舌ざわり。
すこし抵抗するようなアルコールのキック感あり。
そして、アルコール度数は25%しかありませんが、アルコール度数40%をほこるウォッカとおなじぐらいのアルコールの手ごたえある旨味がひろがります。
それは、うすく尖られた白米の芯の部分を蒸しあげ、そして幾度なく蒸留させ磨きあげられた雑味のない純な液体のよう。
けれども、日本人の遺伝子に訴えかけてくる旨味をたくみに積みかさねた充実した旨味があります。
くどくなく、しつこくなく、もたれない、はんなりともした潤としたピュアな旨味があります。
日本酒のかわりとして刺身も食べられる、それほどに清澄で清潔な焼酎です。
銅釜
びっくりしましたわよ。
芋っぽさが、まったくありませんわ。
なんでしたら、白ワインかと思うほどに果実感がありますわぁ。
熟したメロンではなく、すこし硬めの若い緑色のメロンの香りですわぁ。
驚きすぎて、お嬢様言葉になりました、はい。
さて、ほんとにこれが芋で作られた焼酎なの、と驚かされました。
芋の、いの字も見えない。芋がライチの香りになる焼酎はあります。山ねこは、芋の種類がちがうのか、洋ナシや青いリンゴのようなワインに使われる形容詞がぴったりです。
どれだけ蒸留したのか、見当もつかないほどに、精妙に輝く結晶を叩いたような澄んだ香り。
まるで10分の充実した昼寝をしたあとのように、晴れ晴れとした視界になるほどに天衣無縫な味わい。
口のなかにお酒をとどめていると、ジャガイモから造られた生命の水といわれるスピリッツのような素朴な味わいが顔をだします。
その素朴な味わいのなかには、ディルなど緑のハーブの香りもしこまれており後味は、とてもすっきりしたものになっています。
芋で作った西洋のスピリッツの系統に分類されるお酒だと思いました。
山ねこ ロック レビュー

ノーマル
氷をくわえることで、米がもつような気品ある凛々しい甘味が顔をだします。
その甘さは、あくまで天然のもので、しなやかで、しんねりとした艶のある甘さ。
ストレートで飲むことを好みますが、山ねこの米にかんしてはロックのほうが口あたりが大変よろしゅうございます。
また香りも洗練され、磨ぎたての包丁のようにシャープなものになります。
そして、フレッシュな躍動ともいえる軽やかでありながら深々とした旨味があります。
冷やされた液体は、一抹の汚れものこさず、さらに口の汚れも落としきり、無、ゼロ、ナーダといった諸行無常な静けさが口中にもたらされます。
芋
氷で冷やすことで、アルコールが結晶したような壁ができています。
氷の壁のような、しっかりとした手ごたえがあり厚みがある香り。
冷やされると香りが霧散するお酒がおおいなか、めずらしく香りがたつ、たちあがる、前面にたちはだかる気骨のある山ねこの香り。
すこしだけピーナッツの薄皮を炙ったような香りもあり。
比重のちがう液体をかさねあわせたように、すこしだけサツマイモの風味が顔をだしますが、御簾に隠れる平安貴族のようにサっと姿を消します。
あとは、氷に研磨された穏やかでありながら、舌に沈みこむような重みをもった旨味を堪能できます。
そして、後味はゆっくりと消えはてます、芋の形をひとつも残さずに。
炭酸割り

米
硬質の炭酸水と割ることで、果実感がつよく前面にでています。
若いメロン、そしてすこしだけ柑橘系の爽やかな香りもあります。
アルコールの存在をまったく見いだせず、炭酸の泡の刺激だけに集中できる爽快な一杯。
かすかに炭酸のビターな苦味を感じることができ、後味はたいへんさっぱりしています。
どのような環境にも調和する自然体な炭酸割。
芋
炭酸の泡に押しあげられ、芋の風味が持ちあがっています。
もっとも芋の存在を感じ取れるのが、炭酸割かもしれません。
紫の芋の皮、栗の渋皮をあぶったような大地の香りが浮きあがっています。
冷たい液体を口にふくむと、芋の存在はかき消えます。
炭酸で割った液体を飲むと、まるで虚空に紙飛行機をとばしたように、滑らかに音もなく液体は胃にすべり落ちました。
炭酸の泡がはじけるまえに、すぎさったのではと感じるほどに。
芋焼酎の常識の枠をぶち壊してくれた、とても飲みやすい炭酸水割。


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